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鉄道紀行のカリスマが夢見た「富士登山鉄道」とは杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)

富士山の世界文化遺産登録が決定した。「富士登山鉄道」はいまだ構想段階で具体案はこれから……といった感じだ。しかし、いまから約20年前に「富士山鉄道・五合目線」を発表した作家がいた。鉄道紀行作家、宮脇俊三である。

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8両編成、定員800人の列車。4合目―5合目はトンネルで

 宮脇氏は列車について、8両編成・定員800人と想定している。富士スバルラインの需要を代替するために弾きだした数字だ。1両当たり100人である。JRの在来線特急電車は約70席であるから、この定員は30人の立ち客が出てしまう。ちなみに富士急行社長は定員200人の車両を4両編成で、と語ったようだ。編成を半分にして定員を倍にした格好だ。だが、チョット待った。定員200人の電車なんてとんでもない。山手線のような通勤電車でさえ、定員は立客込みで約140人だ。あのサイズのハコに200人とは、山手線の混雑率142%を常態とせよという話になる。

 私見だが、ギュウギュウに詰め込みたいというなら、参考にすべきは宮脇案ではななく、黒部峡谷鉄道や大井川鐵道井川線などの小型座席車である。景観に目を向けていられればこそ我慢できるという、ギリギリのサイズだ。特に大井川鐵道井川線は軌間が1067ミリメートルだから参考になるだろう。井川線は勾配区間もあり、急勾配区間にはアプト式を採用する。半径50メートルの急カーブもある。富士スバルラインに富士急行規格の電車を走らせようとすると、ヘアピンカーブを曲がりきれない。しかし、大井川鐵道井川線の車両規格ならそのまま使えそうだ。もっとも、あの小さな車両ではJR東日本に乗り入れできない。スピードも遅い。

 ヘアピンカーブ問題は宮脇案も承知しており、直線部分の半分は自然に返すかわりに、そこだけは目をつぶって道路から大きく迂回させてもらいたいと著している。あるいはスイッチバックという形になるが、宮脇案はカーブを緩めてスムーズな運行を提案する。また、宮脇氏は4合目から5合目まではトンネルでもいいと提案する。取材当時、もっとも森林破壊が傷ましかったからだという。

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