「大学生にギャップイヤーを」と言いつつ、学生の自由を奪う人たち:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)
「就職する前に大学生に猶予期間(ギャップイヤー)を与え、海外などに目を向けさせるべき」と言う人がいます。また「今の学生生活はモラトリアムがなさすぎる、もっとゆとりを」という人もいます。これらの声に対し、当の大学生は……?
連載「就活・転職のフシギ発見!」とは?
就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。
使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。
著者プロフィール:サカタカツミ
クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』、『就職のオキテ』がある。
個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントにつらいです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata。
ギャップイヤーという言葉が注目を浴びている
最近「ギャップイヤー」という言葉をニュースなどで目にしたことはないでしょうか。この原稿を書いているノートPCにプリインストールされている辞書で調べてみると「大学への入学が決まっている学生が、社会的な見聞を広めるために一定期間(通常1年程度)、入学を遅らせること。また、その期間。イギリスで1990年代から普及した制度で、利用する学生はこの間を旅行やボランティア、職業体験などで過ごす」となっています。ただし、日本では若干事情が異なるようで、大学入学前というよりも、就活する前にギャップイヤーを過ごすべき、もしくは就職する前に「ギャップを作るべき」だという話にもなっています(実際、欧米でもそういう運用がされているケースも多いようです)。
ギャップイヤーという言葉とともに、最近大学生のキャリアを考える上で欠かせないキーワードになりそうなのが「モラトリアム」です。そんな古くさい言葉を持ち出して何が言いたいのか、という声が聞こえてきそうですが、学生生活の中にモラトリアムな時間が少なくなりつつある、とキャリアの専門家(これもよく分からない言葉ですが便宜上そうしておきます)たちが憂慮しているようです。要は「大学生活にゆとりがなくなってきて、就活ばかりしている現状はよくない、なので、仕組み的にゆとりを作り出し、視野を広く持たせるようにしないとダメだ」という話になっています。
ただ、ギャップイヤーを推進したい人たちは「その猶予期間で海外などに目を向けさせることにより、若者たちに国際競争力を付けさせたい」という視座のようですし、イマドキの学生生活におけるモラトリアムのなさを憂慮する人たちは「大人になるための猶予期間を改めてもうけないと、子どもが未成熟のまま社会に出てしまい(=就労)適応できない」ことを問題視することが多いよう。両者が見ている範囲は若干違いますが、外から見ていると重なっている部分も多い印象です。
実はこういう話は、企業の採用担当者たちにとっては「好物」といっても過言ではないテーマ。講演会やシンポジウム、勉強会に足を運んでみると、彼らの姿をよく見かけます。そして、問題だ、取り組んでいかなければならない課題だと認識して、ソーシャルメディアなどを通じて「私心」を発信しています。
ただ、当事者である大学生や若手社会人たちと話をしていると、反応がざっくり二つに分かれます。その「反応の差」に、実は大きな問題が隠されていることに気がついている人は、まだそれほどいないようです。
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