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あなたの仕事は、誰かの「困った」を「良かった」に変えていますか?サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)

子どもの頃「大人になったら何になりたい?」と聞かれたことはありませんでしたか。また就活生から「働くってどういうこと?」と問われたら、あなたは何と答えるでしょうか。今回は“仕事の本質”について考えます。

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連載「就活・転職のフシギ発見!」とは?

 就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。

 使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。

著者プロフィール:サカタカツミ

 クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』『就職のオキテ』がある。

 個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントにつらいです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata


ホットケーキがうまい老舗が閉店した後に起きていること

 赤坂にホットケーキが自慢の店ができたって噂を聞いたんだけど、知ってます? と、編集長の吉岡綾乃さんにたずねたときのことです。「去年の春、ホットケーキが有名な神田の老舗フルーツパーラーが閉店したのはご存じですか? 最後の数週間はホットケーキが食べたいお客さんで、すごい行列ができていたんです」「いや、知りませんでした。それは、美味しいホットケーキが食べられなくて困る人がたくさん出てきますね」「でしょう? そう思っていたら、最近、そこのお店出身のシェフが数人、お店をオープンしていまして……そのフルーツパーラーで出していたようなホットケーキをウリにしているんですよ」と、最近のホットケーキ業界事情について話してくれました。

 それを聞きながら私は「なるほど、これも『困った』を『良かった』にした、そんな事例だな」と、仕事の本質について思いを巡らせていたのです。


池波正太郎が愛したことでも知られる老舗のフルーツパーラー。ヨシオカはホットケーキよりフルーツサンドのほうが好きでした(写真と本文は関係ありません)

中学生が「職場体験の行く前」に私が話すこと

 前回、私が中学生にキャリアの話をするときには、まず「夢」について誤解してはならないことを伝えると書きました。講演などでは、夢という言葉の持つ意味と、夢は持っているだけでは意味がない、夢よりも目標という言葉のほうがしっくりくるケースが多い……そんな感じで話を進めていきます。実は、こういう講演は「職場体験」などのキャリアプログラムの前にくまれることが多いのですが、事前の打ち合わせでは先生たちから、こんな依頼をされることが少なくありません。「働くということの厳しさを、きちんと叩き込んでやってください」と。

 職場体験とは、文字通り、中学生が地域の職場に行き、実際に働いてみるというプログラムなのですが、事前に「働いている社会人」が学校にやってきて「働くことの厳しさ、つらさ、大変さ」を語るという講演がセットになっているケースが多いのだそうです。様々な人がやってきて「自分はいかに頑張って働いてきたか」という話をするそうですが、私はその依頼を断りました。仕事が大変という話を中学生にしても仕方ないですよ、と。実際に働きだしてみると「仕事するのって楽しい」とか「人に評価されるのは嬉しい」という感じで、仕事が好きになるということはあるでしょう。しかし、多くの人は「できたら働きたくない」と考えているはずです。しかも中学生くらいなら働く意味さえもちゃんと理解できていないのに、つらいぞと脅しても意味がない。

 先生たちは「中学生は働くということをなめている」と言うのですが、正しくは「意味を理解していない」ということなのではないか、と私は考えています。その最たる台詞が「大人になったら何になりたい」という一文です。多くの人が、子供の頃から何十回もそう聞かれてきたのではないでしょうか。

 実は、夢という言葉ともう一つ、この台詞が子供たちを混乱に陥れてしまうのです。講演をお引き受けしたときには、中学生たちにこの辺りの話をていねいに説明します。実はこれは、仕事の厳しさを話すよりも、よっぽど厳しい話なのです。

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