中国のバブルが弾ける? 巨大リスクが日本を襲う日:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
中国経済が不穏な動きを見せている。先週までに、中国の短期金融市場の指標金利が急上昇し、あわやバブルが弾け飛ぶとの懸念も出ていたのだ。米国発のリーマンショックよりも、中国問題の根っこは深いかもしれない。
危機はひとまず回避したが
外電などによれば、中国国内にあるこうした非正規金融商品の総額は、中国のGDP(約52兆元=約753兆円)の3割を占めるほどの規模に膨張しているという。3割と言えば、約225兆円。日本のGDPの半分程度の規模を、高利回りで元本保証が怪しい証券が占めているかもしれないのだ。
2000年代後半、世界中の金融市場を混乱の極みに陥れたサブプライムローン問題では、世界中の金融機関や投資家が被った損失は4200億ドル(同約42兆円)と推定された(OECDの同年時点での試算)。
サブプライムローン問題は欧米の巨大金融機関の破たんを通じて、世界的な株安や不況の引き金となった。先の推定損失の規模と、今回問題視されている中国のシャドーバンキング商品の規模を改めて比較してほしい。単純に比較しても、中国の怪しげな商品の規模は既に5倍以上に膨れ上がっているのだ。
世界の工場という枕詞のほかに、最近は中国消費者の旺盛な需要が先進国企業の業績を支えているのは疑いの余地がない。それだけに「シャドーバンキングが弾け、多数の銀行に取り付け騒ぎが起きれば、これが中国全土に拡大。ひいては中央政府への反政府デモに変質しかねない」(同)というリスクがあるわけだ。
同時に、世界中の金融市場は再び疑心暗鬼に陥る。つまり、どこの銀行・証券会社が中国向けの債権が多いか、融資の多寡を調べようと躍起になる。ひいては、リスクを回避しようとプロの金融機関同士が取引する各国の短期金融市場で資金の出し渋りが先鋭化、先のサブプライムローン問題後に不況が長期化したときと同じような状況になり得る。
今後しばらくは「シャドーバンキング」、中国の影に世界が振り回される日々が続く。
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