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弘南鉄道大鰐線は存続できるのか――地方に存在する事情杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)

青森県の弘南鉄道の株主総会で、社長が「2017年3月までに大鰐線を廃止する方向で考えている」と語った。経営者として、赤字部門はすぐにでも廃止したいはず。それを3年後という期限で語ったが、そこに民間企業の苦渋が見え隠れする。

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「3年後廃止」の意図

 弘南鉄道社長はどうして「3年後」という期限を設けたのだろうか。赤字路線ならすぐにでも廃止したいはずだ。鉄道の場合は公共事業という意味合いから「明日廃止します」はできない。廃止希望日の1年前までに廃止届を出し、国土交通省の許可を得なくてはいけない。廃止までの1年間で地元に対して公聴会などを実施し、許可が妥当かを判断する仕組みである。ただし、代替交通機関を自社で用意できるなら半年に短縮される。

 弘南鉄道の場合は、すぐに届けを出しても1年後の2014年7月が廃止日となる。沿線の自治体など関係各所と協議し、自社で代行バスを用意すれば、半年の短縮が認められる。事業の節目となる3月に廃止とするなら、今年9月までに届出て、2014年9月に廃止とし、それを半年繰り上げて、2014年3月で廃止という段取りになる。しかし、弘南鉄道社長は2016年度末と表明した。2年も先である。その真意はどこにあるのだろうか。

 考えられる要素として、1つは「通学輸送」に対する責任感だろう。3年後なら、いまの高校1年生の通学は卒業まで保証される。これから高校受験をする中学生や親御さんに対しても、「在学中に電車通学ができなくなる」と周知できる。これは学校選択の要素の1つになるだろう。学校側としては、3年間あればスクールバスの手配もできるだろうし、それを学費に転嫁するという周知も可能だろう。

 もう1つは、車両の老朽化である。大鰐線で運行している車両は東急電鉄から譲渡された中古品である。製造は昭和40年代。3年後にはほとんどの車両が車齢50年を迎える。安全面や故障時の交換部品手配を考えると、そろそろ車両の使用期限を迎える。これは大鰐線だけではなく、もうひとつの保有路線、弘南線も同様だ。車両の買い替え費用は膨大だ。「弘南線用の車両だけでも大変なのに、大鰐線までは手が回らない」――これが実情と思われる。


私が乗った車両は昭和40年製だった

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