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青木宣親、屈辱のトライアウトからはい上がったメジャーリーガー:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/7 ページ)
日本人メジャーリーガーとして、イチローに次ぐ200安打を達成しそうなのがブルワーズの青木だ。エリートの地位を捨て、夢を追い海を渡ったオトコがいた。
お金は……やっぱり大事ですよね
それでも青木は腐らなかった。ロン・レネキー監督やダグ・メルビンGMが見守る中、2012年1月4日に実施されたトライアウトで機敏な動きを見せて2人をうならせ、メジャー契約を勝ち取った。
しかし、それでも万々歳とはいかない。ここでブルワーズ側から提示された契約額は2年契約で出来高を含む総額250万ドル(約2億5000万円)。2年総額でも前年の2011年にヤクルトから支払われていた年俸3億3000万円に届かない数字であった。入団が決まったころ、青木は「ボクには家族がいるし、生まれたばかりの子どももいる。お金は大事じゃないといっても……。大事ですよね」と苦笑いしながら語っていたが、この低額の契約は本人にとってわれわれが想像している以上に切実な問題だった。
青木を一番悩ませたのは税金の支払いである。プロ野球選手は基本的に「個人事業主」。一般的に青木クラスの年収ならば税金は所得税が40%、住民税が10%の総計50%が課税される。経費をいくら計上するかなど、さまざまな「税金対策」があるとはいえ、単純に2011年の収入となったヤクルトの年俸の半分を税金で持っていかれると考えれば、総額で1億6500万円だ。メジャーでいくら頑張っても2年分の給料の約3分の2が税金で消えるとなれば、さすがに「お金なんて関係ない!」とは簡単に言い切れないだろう。
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