“激安ユッケ”の教訓は? 安易なタイアップは止めるべし:相場英雄の時事日想(2/3 ページ)
テレビ業界では経費節減が叫ばれているが、ある関係者によると「企業とのタイアップはおいしい存在」だという。しかし安易な企画は、視聴者のためになるのだろうか。数年前に起きた悲劇の教訓を忘れてはいけない。
冒頭で触れた通り、昨今の民放ニュース番組を見ていると、この“一線”をやすやすと越えた内容の企画が多すぎるのではないだろうか。
『大手◯△スーパーが激安お弁当を全国展開!』『大手すしチェーンが◯×サービスを期間限定で!!』などがそれだ。
もちろん、夕刻の時間帯は主婦層が主要な視聴者であり、耳目を集めるテーマが必要、との理屈は理解できる。だが、いざ当該のスーパーやすしチェーンで問題が発生した際、番組担当の記者やディレクターはきっちり取材し、批判することができるのか。また、こうした大手企業は番組そのもののスポンサーだったりするケースもある。事件事故が起きた際、取材に手心が加えられるのでは? と勘ぐってしまうのは、元記者のうがった見方だろうか。
また、ニュース番組が終わると、各局の編成はゴールデンタイムのバラエティー番組にシフトする。この際も、大手企業の工場に“潜入取材する”などと称し、お笑い芸人やタレントが企業の言い分だけを拾い上げ(というか、そういう台本に沿って)面白おかしく番組が展開していく。
過日、大手広告代理店勤務の友人に聞いたところ、こうした一連の事象は「(代理店と企業にとって)非常においしい」との答えが返ってきた。
要するに「なんの問題意識も持たない番組担当者はカモ。こちら(代理店や企業)が提供した素材とシナリオに沿って、ほとんど実費がかからない形で新商品や企業のアピールができる」からなのだという。
某民放局報道関係者にこうした傾向について聞いたところ、「タイアップ企画はテレビマンとして最低の仕事」との返答があった。だが、制作経費節減が叫ばれる中、編成担当など上層部からの無言の圧力もあり、「なかなか抗えない」と弱り切っていたのが印象的だった。
関連記事
- ヤバいのは“中国猛毒食品”だけではない、日本にもある
『週刊文春』が“食”に関する記事を掲載した。記者が中国に飛び、ヤバい食品がどのような経緯で生まれたかをリポートしたものだが、日本には危険な食べ物がないのか。答えは「ある」。 - “カワイイ”が自然を殺す、北海道で見た人間の残酷さ
「キタキツネ」といえば、北海道の野生動物のひとつとして有名だ。野生動物なので、本来、人間とはあまり遭遇しないものだが、筆者の相場氏はクルマを運転中に出会った。しかもその姿を見て、違和感を覚えたという。その理由は……。 - 「ピンクスライム」は問題にならないのか 食品業界の裏側に迫る
米国のファストフード業界が揺れている。低価格を支えるある加工商品がやり玉に上がっているが、米当局や専門家は安全性に問題はないとしている。それにしてもこの問題、日本に“飛び火”するかもしれない。 - “やらせライター”に困っている……とあるラーメン店の話
とあるラーメン店の店主がこう言った。「本業以外の雑務が増えてやりにくい。昔はこんな気を遣う必要なかったのに」と。本業とは、もちろん丹誠込めて作る自信作のラーメンのこと。では本業以外とは、一体どんなことなのだろうか。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.