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“激安ユッケ”の教訓は? 安易なタイアップは止めるべし:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
テレビ業界では経費節減が叫ばれているが、ある関係者によると「企業とのタイアップはおいしい存在」だという。しかし安易な企画は、視聴者のためになるのだろうか。数年前に起きた悲劇の教訓を忘れてはいけない。
激安ユッケの教訓は?
かつて当欄では、新聞や雑誌に載る広告で、最近詐欺やマルチ商法まがいのいかがわしい内容が増え、読者が惑わされかねないと指摘した(関連記事)。
民放各局のタイアップ企画も同様のリスクを内包しているとするのは言い過ぎだろうか。というのも、わずか2年前の2011年春、一部の激安をウリにする焼肉チェーンが起こした事件を忘れてしまったのか、と問いたい。
同年、激安チェーン店が提供した「和牛ユッケ」から、腸管性出血性大腸菌O111による集団食中毒が発生、複数の顧客が死亡した一件だ。
このチェーン店で食中毒が発生する前、当時人気だったバラエティー番組でこの店を紹介したことがあった。被害者たちが番組を見たかどうかは判断できないが、「あの番組で取り上げたから行ってみた」という顧客はかなりの数に上ったのではないか。
企業とのタイアップ。家電や家具などはさておき、企画の大半は格安や激安をうたう飲食のチェーン店が多い。小説の取材で、食品偽装や流通面での“暗部”を垣間みてきて私としては、2年前の教訓が全く生かされていない、と思うのだが。
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