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ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

従業員を劣悪な環境で働かせ、使い捨てにする――。いわゆるブラック企業が社会問題になっているが、なぜそこで働く人は会社を辞めようとしないのか。その背景にあるのは……。

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ブラック企業で苦しめられ、そのまま働けなくなってしまう人もいる(写真はイメージです)

 しかし、辞めないことで事態はさらに悪化する。「新型うつ」などを発症し、追い出されるように職を辞し、そのまま働けなくなってしまう、という方も少なくない。

 ほとんどの人が真面目さゆえ、誰にもSOSを発することなく、歯を食いしばって、その場に踏み止まる。そして、最悪ポキンと折れてしまう。

 過労自殺した「ワタミフードサービス」の26歳の女性社員も入社1カ月半で手帳に「誰か助けて下さい」と書いたが(関連記事)、両親や周囲に対して実際にSOSを発することはなかったという。

 こういう悲劇を見るたびに、似ていると感じるのが孤独死だ。

 2009年4月、北九州市で「たすけて」とひらがなで書いた紙の切れ端を残し、39歳の男性が餓死をした。生活保護打ち切りの「犠牲者」として大きく報じられ、「無縁社会」という流行語ができるきっかけとなった事件なのでご記憶にある方も多いだろうが、実はこの男性はそこまで「無縁」ではない。

 市役所に自ら足を運んで、生活保護を受給し、その辞退届も出している。亡くなる少し前は親友の母親に炊き込みご飯をつくってもらっている。誤解を恐れずに言えば、生きるか死ぬかという極限状態のなかで、SOSを発するチャンスがゼロだったわけではない。

 にもかかわらず、彼は紙切れに書いた「たすけて」を周囲に発することなく、自分だけで歯を食いしばって餓えと闘うことを選ぶ。

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