JR東日本さん、その卸値、安くない? Suicaのビッグデータ騒動:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
JR東日本がSuicaによって取得したデータを他社に提供したことが、問題になった。個人情報保護よりも、Suicaなど会員制ビジネスがもたらすお金の仕組みはどうなっているのか。やり方によっては、大きなビジネスチャンスになりそうだ。
Suicaの預り金は178億円以上
私はそれらの報道を見聞きして、Suicaデータの是非はともかく、Suicaの発行枚数に驚いた。新聞報道などによると総発行枚数は約4300万枚という。JR東日本の2013年度決算説明会の資料をあたると、発行枚数は約4247万枚という数字が出た。このうち、クレジットカードの「ビュー・スイカ」カードの会員は約373万人。モバイルSuica登録会員数は約311万人。この2つを差し引くと、Suica乗車券とSuica定期券の発行枚数は約3563万枚となる。
利用者なら誰でも知っているように、IC乗車券を利用するには預り金(デポジット)が必要だ。Suicaは駅の多機能券売機やみどりの窓口で購入できる。支払額は2000円だ。このうち500円が預り金となる。乗車や買い物で使える金額は残りの1500円だ。Suicaカードは契約上、JR東日本が利用者に貸与している。「カードをお貸ししますから、保証金として500円を預かりますよ」という仕組みだ。
利用者にとって500円は大した金額ではない。むしろ、いちいちきっぷを買う煩わしさから解放され、駅の売店やコンビニ、ホームにあるジュース自販機で使える便利さの対価としては安い。その安い500円も、3563万枚ぶんとなると、178億円になる。ビッグデータならぬビッグマネーだ。いや、ビッグマネーという呼び方はいろいろな場面で使われているからやめよう。ミクロデータ、マクロデータの考え方に照らし合わせて、利用者一人ひとりのミクロなお金の集合だから、“マクロマネー”と呼んでおこうか。
それが178億円。これをメガバンクの普通預金に預けると、2013年7月現在の金利は0.02%だから、年間356万円生み出してくれる。
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