麻生氏「ナチス発言」騒動の本質は、「ナチスの手口」を学ばないと分からない:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
麻生副総理の「ナチス」発言を受け、批判が広がっている。問題発言が多い政治家だけに、どうしても「またかよ」と感じるかもしれないが、今回の発言を振り返ると、大騒ぎするほどのことではない。むしろ問題は……。
マスコミが仕掛ける「喧噪」
「ナチス」発言の直前、麻生氏は靖国参拝を引き合いにこんなことを言っている。
昔は静かに行っておられました。各総理も静かに行ってたおられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。
マスコミが仕掛ける「喧噪」(けんそう)にのまれ、冷静な議論が行われず、政治や世論が誘導されていく。
そんなプロパガンダの「悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげた」と麻生氏はコメントを寄せている。特に間違ったことは言っていない。
実際、当時のナチスによる「喧噪」はすさまじかった。
例えば、1938年11月9日深夜から翌未明にかけて、ドイツ国内のユダヤ人コミュニティが暴徒に襲われ、死者96人を出し、177のシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)、4500以上のユダヤ系商店が破壊された。後にホロコースト(ナチスによるユダヤ人大虐殺)にもつながる「水晶の夜」事件だ。
戦時中の日本が地球支配を狙う悪の組織でなかったのと同じように、当時のドイツにも平和を望む者はたくさんいた。だから当然、こんなむごいことを止めよう、と訴える人も大勢いたが、そこはナチスが一枚上手だった。
政権をとった段階で手中に収めていた新聞、テレビ、ラジオというマスコミを駆使して「煮えたぎる民族精神の正当な蜂起」というプロパガンダを展開したのである。それを裏で糸を引いていたのが、「プロパガンダの天才」と呼ばれた宣伝省のゲッベルスだ。
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