コカ・コーラのようなマーケティングが、日本でできない理由:仕事をしたら“会社に足りないモノ”が見えてきた(7/7 ページ)
とあるコンサルティング会社が発表した「企業のブランド価値」ランキングによると、「コカ・コーラ」が13年連続でトップ。日本企業を見ると、トップは「トヨタ」で10位どまりだ。Neo@Ogilvyの山崎浩人さんは、コカ・コーラはある特徴的なマーケティングをしているという。それは……
企業価値を下げないために
土肥:山崎さんはデジタルマーケティングに関わっていらっしゃいますが、今後、この分野はどのような形になっていくと思われますか?
山崎:これまではブランド(会社)は消費者に対して、一方的に語りかけていました。テレビという巨大な装置が好きなことを言っても、消費者が素直に聞いてくれる。そんな時代があったのですが、今では聞いてくれる人が少なくなったと思います。
土肥:聞いてくれる人が少なくなった背景に、SNSの普及が大きい?
山崎:そうですね。ブランドと消費者が同じ目線で、SNSで語り合うようになりました。あるブランドのファンが、友だちなどに情報を拡散していく。消費者は、ブランドの発信よりも、友だちからの発信のほうを信頼する。いまのブランド価値の半分ほどは消費者によってつくられている、と思ってもいいのではないでしょうか。
例えば、100万人とか1000万人に何かを伝えたいとき。これまでだったらテレビという装置を使って、たくさんの人に伝えていました。「認知」の世界ですよね。伝わるのがゴールみたいな。一方、SNS上での伝わり方は、「共感」の世界なんですね。昔と違って、伝え方が変わってきていますし、伝えるべきレベルも変わってきています。これからは多くの人に広く認知させるだけでなく、そのブランドのファンの深い共感と拡散を獲得していくマーケティングが重要になると思います。
フィリップ・コトラーは、このように予測しました。「2030年には、企業が使う広告費のうち半分はSNSになるだろう」と。もしそうであれば、Facebookページをつくっておきながら、相変わらず一方的に情報を発信するだけで、消費者とのコミュニケーションをとらず、共感を創造する活動もしていない企業は、考え方から変えたほうがいいでしょうね。デジタルの進化で、これからも企業と消費者との関係にイノベーションが起きていくと思います。
先進的な伝える「手段」と本質的な伝える「中身」でマーケティグを強化していかないと、日本企業はこれからの時代の変化に適応できないでしょう。
土肥:そんな企業は“価値がどんどん下がっていく”ということですよね。本日はありがとうございました。
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