コカ・コーラのようなマーケティングが、日本でできない理由:仕事をしたら“会社に足りないモノ”が見えてきた(6/7 ページ)
とあるコンサルティング会社が発表した「企業のブランド価値」ランキングによると、「コカ・コーラ」が13年連続でトップ。日本企業を見ると、トップは「トヨタ」で10位どまりだ。Neo@Ogilvyの山崎浩人さんは、コカ・コーラはある特徴的なマーケティングをしているという。それは……
山崎:狼を見ると、日本では「孤独」とか「怖い」と感じる人が多いでしょう。しかし狼は群れになって生活する動物で、その群れは主に家族で構成されています。ですので、西洋文化においては、家族の象徴として受け止められているんですよ。
土肥:ほー。日本では一匹狼のイメージが強いですが、西洋でのイメージは違うわけですね。それにしてもこのCMは、防寒具メーカーのものかなと感じますね。映像は3分ほどあるのですが、ラストの5〜6秒になってようやくホテル名が出る。はっ、これは企業価値を上げるCMなので、これでいいのか。
山崎:雪山の景色は、家族から離れ、孤独で、いろんなストレスを抱えている……そんなトラベラーを表現しています。ドイさんが指摘されたように、防寒具メーカーのCMと誤解されるかもしれませんが、最後まで見ると、ホテルで宿泊することや心の暖かさといった、ホテルの世界観をイメージできるようになっていますね。
ここで日本企業で働く人はこう思うんですよ。「で、これで売れるの?」と。
土肥:思います、思います。自分が企業担当者だったら「もっと会社をアピールしようよー」と言ってるかも(笑)。
山崎:でも結果は出ているんですよ。宿泊率を見ると、前年比28%の増加。またシャングリ・ラのWebサイト訪問数が78万件も増えました。そしてお客さんから「スタッフのサービスレベルが向上した」という声が出てきました。
ゲストにどのように接しているのですか? と聞かれたら、シャングリ・ラのスタッフは「家族のように」と答えるでしょう。実際に、サービス自体にも変化が生まれました。「家族」という言葉は、誠実に歓迎して温かく、といった“サービス”の本質的な意味を明確にしました。それによって、ゲストには笑顔や感謝が増え、スタッフには「シャングリ・ラで働く誇り」が生まれた。「家族のように接する」というブランド理念が全ての軸になることで、企業の成長に結びついたのではないでしょうか。
土肥:私は誤解していました。企業価値を上げるというのは「消費者に向けて」だけではなく、そこで働く「自分たちに向けて」でもあるんですね。
山崎:個人的には「自分たちに向けて」というインナーブランディングが半分ほど占めていると思っています。○○会社で働くことを誇りに感じている――そう思う社員がひとりでも増えれば、会社の成長につながるのではないでしょうか。実際、そのようなデータもありますからね。
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