『風立ちぬ』にクレームをいれた「日本禁煙学会」は、間違ったことはしていない:窪田順生の時事日想(1/4 ページ)
映画『風立ちぬ』の中で喫煙シーンが多過ぎるとして、日本禁煙学会が要望書を送った。このことについて、多くの人が批判しているが、学会が行ったことは本当に悪いことなのか。実は、間違ったことはしていないのでは……。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
大ヒット中の映画『風立ちぬ』に喫煙シーンが多過ぎるとNPO法人「日本禁煙学会」(以下、禁煙学会)が要望書を送ったことに、さまざまな方面から批判にさらされている。
他人様がつくった映画の表現まで、口を出すとは「禁煙ファシズム」以外の何者でもない、なんて愛煙家からの反撃にとどまらず、身内であるはずの嫌煙家からも、「禁煙には賛成だが、戦前の物語を描いた映画にイチャモンをつけるのはやりすぎだろ」とコキおろされてしまっているのは、ご存じのとおりだ。
「売名行為」や「炎上マーケティング」ではないかという話まで飛び出して、まさしく四面楚歌という状況だが、個人的には「禁煙学会」の行動は「正しい」と思っている。
なんて言うと、「ははあん、こいつも禁煙推進一派か」と思われてしまうが、そうではない。
「禁煙学会」は「学会」という体をとっているものの、喫煙と健康の影響をフラットに研究し、真理を追い求める学徒の集いではない。はじめに「禁煙」ありきで、モロそちら側のバイアスがかかった研究や発表を行う。つまり、「運動団体」だ。事実、「禁煙学会」の設立目的のド頭には、こんな宣言をしている。
(1)医師だけではなく、薬剤師・看護師その他コメディカル、あるいは禁煙に関心を持つ一般の方を広く糾合し、禁煙運動を推進します。(日本禁煙学会Webサイトより)
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