蒸気機関車はどうやって動くの? 夏休みの自由研究は「鉄道」で:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
夏休みの宿題といえば自由研究。たっぷりある時間を利用して、興味の対象を深く知る良いチャンスだ。もし、まだテーマが決まっていないなら、身近な鉄道をテーマにしていかがだろうか。
「電車の追い越し」の研究は、東急東横線の急行がどこで各駅停車を追い越すかを調べた。列車ダイヤ研究の初歩だ。渋谷から桜木町まで、急行は各駅停車をいくつ追い越すか、実際に乗って調べた。自由研究にかこつけてお小遣いをせしめて、電車に乗りたかっただけとも言える(笑)。それでも、朝と昼間は追い越す数が違うという発見があったし、追い越す駅の仕組み、線路の配置も興味深かった。
「東海道本線のダイヤを作る」研究はかなり本格的だった。市販の時刻表を買ってきて、方眼紙を縦横につなぎ、時刻表の数字から東海道本線のダイヤを復元した。ダイヤとは列車の動きを示す折れ線グラフのようなもの。特急は赤、急行は青、快速は緑、普通列車は黒で塗り分けた。特急「あまぎ」はどこで各駅停車を追い越すか、ひと目で分かった。寝台特急は夜通し走り、各駅停車や急行を追い越す。通勤時間帯は普通列車が多く、図面の色が濃く見えた。大阪付近は新快速が15分おきに走っていて、とてもきれいな幾何学模様になった。
「東急全線のダイヤを作る」研究は取材が大変だった。当時、私鉄には国鉄のような列車単位の時刻表はなかった。『MyLine 東京時刻表』は創刊されていなかったし、インターネットもないから『えきから時刻表』もない。私鉄の時刻表といえば、各駅で配布する小さな発車時刻表だけ。駅に掲示されている時刻表を印刷した紙だ。そこで、各駅を訪問して発車時刻表を集めた。
発車時刻表を配布していない駅もあるから、親のカメラを借りて駅に掲示された時刻表を撮影した。白黒フィルムで現像代を節約。材料がそろったら、始発電車から順に、隣の駅の発車時刻を追いかけて、点を線で結んでいく。すべて仕上げた時は興奮して眠れなかった。発表会でクラスメイトにドン引きされたと思うけど、そんなことは気にしなくていい。「自由」なんだから。
さて、今回は「鉄道おじさん」の私から、子どもたちへ自由研究のテーマを提案しよう。北海道は夏休みが短く、すでに2学期が始まっているだろう。遅くなって申し訳ないが、来年の自由研究に役立てていただければ幸いだ。
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