「こじらせている就活生」に対して、社会人がやってはいけないこと:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/4 ページ)
大学生から就職についての相談を受ける人が増える時期です。最近はいろいろな人に話を聞き、セカンドオピニオンを求めるという学生も増えているのですが、「アドバイスを受けた結果、余計混乱する」という事態が起きているといいます。
「視野を広げさせる」の本当の意味
まずは「視野を広げさせる」というアドバイス。視野を広げるという話は、最近就活をしたという人なら、耳にタコができるほど聞いた台詞でしょう。厳選採用が進む就活、やりたい仕事や入社したい会社にばかりこだわっていたら先には進まないはず。なので、もっと広い視野を持って仕事や企業を探すべきだと、多くの人は訳知り顔でアドバイスをします。もちろん、このアドバイスは有効で、私も自著などで同様の発言をしています。ところがこのアドバイスは、就活生を混乱に導き、事態をこじらせてしまうケースも少なくないのです。
視野を広げるというアドバイスには、もう一つ台詞が追加されます。それは「世の中にはたくさんの仕事がある」というそれです。そんなことは就活生でも分かっています。が、アドバイスはさらに続きます。朝起きて、学校に行って夜寝るまで、行動を全部書き出してみて。そして、そこに係わっている人たちがどれくらいか、書き出してみて。ほら、たくさんいたはず。それだけの人がそれぞれの仕事をしているということ。ね、だから今の視野がいかに狭いかと自覚できるでしょう? と、満面の笑みでアドバイスするのです。
しかし、そう言われた就活生は戸惑ってしまいます。いや、世の中にはたくさんの仕事があるということは分かっている。けれども、自分のやりたい仕事や入社したい会社は決まっているわけで、それ以外に目を向けろと言われても、それは難しいと。なのに、この社会人はなぜ私にそんなことを言うのかと、不思議な気持ちになってしまうのです。これを読んでいるベテランの社会人なら察しがついたと思います。「視野を広げろ」というアドバイスの裏には「志望している会社や業界はあなたには無理」という本意が隠されている。けれども、アドバイスを真に受けてしまう就活生なら、文字通り捉えてしまうので、これ以上業界を増やすなんて無理だと、尻込みしてしまうのです。
視野を広げるというアドバイスは曖昧すぎて、就活の量が増えるだけという印象を就活生に植え付けます。しかも、なにも解決しない。希望する業界がハッキリしている、入社したい会社が決まっているという就活生には無駄な忠告なのです。勇気を持って「無理」といってあげられないのならば、冷たいようですが「いまのまま、頑張ることが一番だよ」というアドバイスがベター。第一、無理と思っているのは相談を受ける人であって、それが正しい判断なのかどうか誰にも分からない。だとしたら、シンプルに応援するのがベストでしょう。下手な助言で相手を戸惑わせることに、あまり意味はないからです。
好きを仕事に、という甘い言葉はかけてはならない?
話は変わって……。「だったら」という言葉が添えられて相談された人が就活生に促す行為として、「自分の好きなものを考えさせる」というワーク(=この表現以外にピッタリな言葉が思いつきませんでした)があります。やりたいことがない、就きたい仕事が思いつかない、入社したい会社がイメージできないという就活生に対し有効なアドバイスとされています。好きを仕事にするのが一番、だから、好きなこと、やっていて楽しいこと、自分が生き生きとできることを整理して、そこから仕事を考えてみて、いかにもありがちでやりがちな助言、なのですが、これもしてはならない行為の一つでしょう。
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