エアアジア・ジャパン、不振の原因は何だったのか?:INSIGHT NOW!(1/3 ページ)
日本で本格的なLCC(格安航空会社)3社が就航して1年が過ぎ、その明暗がはっきり出ている。エアアジア・ジャパンの苦戦の理由として関係者やアナリストが指摘するものは、いずれも十分納得できるものではない。
著者プロフィール:日沖博道(ひおき・ひろみち)
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
LCC3社のうち、全日空子会社で関西空港を拠点とするピーチ・アビエーションが最も好調で、就航から6月までの平均搭乗率は78%と国内トップを達成した。もっとも、この搭乗率でもまだ赤字であることから、LCCが搭乗率8割程度を要するシビアなビジネスモデルであることが分かる。同社は2014年3月期に(当初計画よりは前倒しで)営業黒字達成を視野に入れている。
ジェットスター・ジャパンも健闘している。先日の発表では、就航1年余りで総搭乗者数が200万人を超えた。同社は2012年7月に成田−札幌、成田−福岡線を開設。中部や関西へも路線を拡大し、現在13路線で1日70便が運航中だ。1年間の平均搭乗率は72%になる。
それに対しエアアジア(マレーシア)と全日空の合弁だったエアアジア・ジャパンは、2012年8月の運行開始後、成田をベースに新千歳、福岡、那覇を結ぶ3路線に、中部空港をベースとする2路線などを加えた。しかし報道によると2012年度の搭乗率は国内線では63.9%、国際線では61.9%と苦戦中である。
このせいで同社は最近合弁を解消し、全日空の100%子会社になった。2013年11月からは社名を「バニラ・エア」に変更する。新会社は当面は成田発着に集約し(中部空港からは撤退)、国際リゾート路線に特化する戦略を採るそうだ。
この件については小生も興味があったため、これまで時折論じてきた。不可思議なのは関係者が語るエアアジア・ジャパンの苦戦の真の理由である。
関連記事
- エアアジア・ジャパン、新体制はリゾート路線特化の「バニラ・エア」
マレーシアのエアアジアとの合併を解消したエアアジア・ジャパンが新社名「バニラ・エア株式会社」を発表。成田を拠点に国内外のリゾート路線に特化したLCCとなる。 - ソウルまで6980円〜、エアアジア・ジャパンが成田−仁川線就航
LCCのエアアジア・ジャパンが国際線の就航計画を発表した。成田ー仁川線を10月28日から1日1往復運航する。価格は6980円〜2万9980円(片道)。 - ピーチがついに首都圏に、関西−成田線を10月27日就航
Peach Aviationは10月27日に関西−成田線を就航。1日2往復で、最も安い価格は片道3790円。井上慎一CEOは「関西発からの航空イノベーションを東京でも」と意気込んでいる。 - ジェットスター、ローソンの「Loppi」でチケット販売――6時間前まで購入可能
国内LCCのジェットスター・ジャパンがローソンと提携。現金による国内航空券の予約と購入が全国のローソンで可能になった。 - 機長が荷物運びを? シートの背もたれが倒れない? LCCの“格安”のヒミツ
2012年3月1日、日本で初めてとなる本格的LCCのピーチがデビューした。大手とは異なるビジネスモデルで驚異的な低運賃を打ち出し、航空自由化が進んだ欧米で発達してきたLCC。2000年代に入るとアジアにも波及し、その数は現在、世界で120社を超えている。LCCはどうやって“格安”を実現しているのか?
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.