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米国がシリアを攻撃すれば日本経済にも影響が出る:藤田正美の時事日想(2/3 ページ)
シリアの内戦で化学兵器が使われた可能性が濃厚になった。誰が何の意図をもって使ったのかは定かではないが、米国はシリアに対して懲罰攻撃を行うという。
米国にとってもアサド退陣は得策ではない
米政府はシリア政府高官の通信で化学兵器に触れているところがあり、それも証拠の1つと語っている(通信そのものは公表されていない)。もちろんこうした情報の多くは、本来、機密のものだ。どこまで知っているかが明らかになるような情報開示はしない。
それを見越して、ロシアのプーチン大統領は国連に証拠を開示するよう求めている。もともとロシアはシリアと近く、多額の投資をしている関係から、アサド政権を支持している。その意味ではアサド大統領を倒す可能性のある米国の介入は是が非でも避けたいところだ。
米国にとってもアサド大統領がいなくなることが本当にいいかどうかは疑問だ。もし現政権が倒れたら、誰が権力を握るのか。少なくとも米国がこれまで望んできたような穏健派が政権の座につくことは考えられない。アサド政権の次に生まれるのは、「反米」を掲げる過激派あるいはイスラム原理主義者である可能性が非常に高い。
もしそうなったら、事態は現在よりも悪くなる。レバノンのイスラム教シーア派の武力組織ヒズボラは、イスラエルに対する攻撃を強める可能性がある。ヒズボラが勢力を強めれば、イスラエルはレバノンに対する攻撃だけでなく、それを越えてシリアへの攻撃を始める可能性もある。そこまで来ればイランも黙ってはいないだろう。これで一気に中東が不安定化する。シーア派とスンニ派の争いが拡大すれば、サウジアラビアも巻き込まれることになる。世界のエネルギーは大混乱だ。
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