真夏にこんぶ茶を売れ! 季節外れに潜在需要を掘り起こしたO2O事例:カイモノマーケティング(3/4 ページ)
スマートフォンなどを使ってオンラインで客の興味を喚起し、実店舗に送客するO2O。この夏、ダイエー碑文谷店で行われた取り組みでは、こんぶ茶の販売数が前年比450%増にもなりました。
O2Oの最も重要なゴールは「売れること」
今回のO2O企画の成功要因を、戦略面と戦術面の2つから分析してみます。まず、戦略面ですが、オフシーズンだからこそ、こんぶ茶を飲み物ではなく調味料と位置付け、新たな市場を開拓することで消費者の常識を超えた「気付き」を提供でき、潜在的なニーズの発掘につながったのだと思います。専門用語で言うところの「ブルーオーシャン」です。そして戦術面では、さまざまな施策によって、オンラインからの単なる送客にとどまらず、商品価値を伝えきれたことで、売りにつなげることができました。
少し専門的な話になりますが、業界では昨今、「ショッパーマーケティング」や「インストアマーケティング」という言葉がよく使われます。その概念の中に「FMOT(First Moment of Truth)」と「ZMOT(Zero Moment of Truth)」という考え方があります。
FMOTは、2004年に米P&G社が提唱した購買行動についての概念です。店頭に来た客が、売り場を見て購入商品を決定するまでの3〜7秒のことをFMOT(購買の最初の真実の瞬間)と呼んで、店頭プロモーションの重要性を説きました。
2010年には米GoogleがZMOTを提唱します。店頭に行く前にWebから情報を得て購入商品を決める人が増えていることから、Firstの前、つまりZeroが消費者にとって重要な瞬間だというのです。そして、Webでの認知、店頭での購買に加えて、もうひとつ消費者にとって重要な「使用・体験」の瞬間をSMOT(Second Moment of Truth)と名付け、下図のようにまとめています。
難しいように思われるかもしれませんが、Zero=Webでの認知や情報収集、First=店頭での購買決定、Second=買った商品の使用と、当たり前のことを表しているだけです。
今回紹介した事例では、シュフモでの情報を提供し集客するのがZMOT、店頭での売り場づくりや試食販売、クーポン配布などで購入を促進するがFMOT、家でトマトおでんを作って食べるのがSMOTという流れを作ったわけです。
ひるがえって、昨今のO2O施策は送客(ZMOT)だけが重要視されていないでしょうか? 店頭で意思決定をするための施策までを戦略的に構築しなくては、実際に売れるところまでつながりません。
トマトの販売数グラフでも、試食前後で大きく実績が変わっているように、FMOT=店頭での意思決定の瞬間をおそろかにしないことが重要です。O2Oは最終的に買ってもらわなければ意味がないのです。
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