技術者の新しい働き方、「技術者派遣」について考える:「派遣」は安定した生き方?(2/2 ページ)
得意分野を生かせる会社で働きたい――技術者を目指す学生の多くはそう考え、会社を選ぶ。しかし最近、自分の技術力を磨き、安定した雇用のために“派遣”を目指す技術者が増えているという。技術者派遣とはどのような世界なのか、ちょっとのぞいてみよう。
技術者が派遣として働くメリット・デメリット
一般的に“派遣で働く”というと、一般派遣のイメージが強い。「いつ切られるか分からない」「不安定な仕事」という感覚だろう。このイメージを引っ張るわけではないが、たとえ特定派遣だから、派遣元に雇われる正社員だからといっても、働く期限は決まっているわけだし、次から次へ職場を変えていかなければならないなんて、自分のアイデンティティを失ってしまいそうに思える。
しかし先ほども述べたように、派遣として働く技術者は派遣業界全体の2割もいる。技術者が派遣として働くメリットは、どこにあるのだろうか。
やはり大きいのは、リストラにあわないこと。例えば近年も、ある半導体メーカーが業績不振となり、500人規模のリストラを敢行したことがあった。この時代、次の仕事を決めるのは大変だ。テクノプロ・グループの場合、その会社に80人ほど派遣していたが、彼らはみな、すぐにまた別の職場でそれぞれ働き出したそうだ。こういう話を聞くと、実は特定派遣は不安定ということもなく、むしろ安定して給与を得られる手段のようにも見えてくる。
また、いろいろな職場で働けるのもメリットだという。1つの会社の社員として研究開発を担当したとしても、必ずしもやりたいテーマにめぐり合えるわけではないし、会社の方針が変わることもあるだろう。しかも前述の通り、リストラにあってしまえば元も子もない。特定派遣で働いていれば、教育研修で最先端の知識を学べるし、またそれを生かせる会社に派遣してもらうことも可能だ。
とはいえやはりデメリットはある。たとえ思い通りのメーカーに配属されたとしても、身分はあくまでも派遣社員。開発のキーとなる部分はブラックボックス化され、その会社の正社員しか触れることはできず、与えられた仕事は雑用ばかり、というケースもあるようだ。
また、1つのところでじっくりと仕事ができるわけではないので、頭を素早く切り替える必要がある。そして技術者としてのスキルを常に高めることが必要だ。それができなければ雇用ニーズに乗れず、待機時間が長くなってしまい、最悪の場合は退職してしまうケースもあるという。
エンジニア冬の時代?
これまで“派遣社員としての技術者”について見てきたわけだが、こうした競争にさらされるのは派遣社員だけではない。メーカーの正社員も同様だ。日本は現在人口減少傾向にあり、就業人口も減りつつある。それに加えて各メーカーは工場を海外に移転させているし、国内の工場でもリストラをするという話は後を絶たない。国内で技術者の働く場所はどんどんと減っているのだ。こうなってくると、今後は海外で働くケースが増えることも想定される。
「これをやりたいからこの会社に入りたい」と、夢を持って入社するのもいい。そこで何らかの技術を手に入れるまで、意地でも同じ会社で働くのも1つの手だ。しかし優秀な技術者であれば、それとは異なる選択肢として、特定派遣という働き方もいいかもしれない。
“理系離れ”と言われて久しいが、そもそも理系出身者が専門性を生かして働ける職はきちんとあるのか。働き始めてから専門性を身につけた文系エンジニアも事情は同じだ。現代のエンジニア、そしてエンジニア志望者は、大局を見据えて自分の生きる道を考える必要があるだろう。
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