日本社会のモラルは低下している? 続発する食品偽装:窪田順生の時事日想(1/3 ページ)
日本全国のホテルで「食品偽装」が話題になっている。こういうニュースが流れると、「日本社会全体のモラルが低下している」といった声が出てくる。しかし、低下しているのは「モラル」ではなく……。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
最近、日本全国のホテルで「食品偽装」が話題になっている。
のべ47品目ものメニューが実際の食材と異なったものを使用していたことを「誤表示」だと言い張って、社長が辞任に追いやられた阪急阪神ホテルズを皮切りに、ザ・リッツ・カールトン大阪、名鉄グランドホテル、JR系ホテルクレメントなどの名が連日のようにあがり、名門・帝国ホテルまで飛び火。問題の広がりっぷりはとどまることをしらない。
こういうニュースが流れると必ずといって出てくるのが、エラい先生やらジャーナリストみたいな人たちがおっしゃるこんな意見だ。
「日本社会全体のモラルが低下しているのではないか」――。
昔の日本人はインチキをしたり、客をダマしたりして金もうけしようなんて恥知らずなことはしなかった。それに比べて、今の日本人には「誇り」がない。ああ、情けなや、というわけである。
こういうことを言う人はわりと世の中多いようで、阪急阪神ホテルズが運営するホテルで「誤表示」が明らかになった時も、「小林一三が草葉の陰で泣いている」みたいな声が多く聞かれた。
先人は偉大である。こういう考えは否定するつもりはサラサラないが、最近になってモラルが急落した、みたいな言い方はいかがなものかと思う。
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