夜行列車はなぜ誕生し、衰退したのか:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
先週末、地方紙「河北新報」Web版が発信したニュースがネット上を駆け巡った。寝台特急「あけぼの」廃止だ。1970年代に全盛期を迎えた寝台列車は衰退の一途。しかし、夜行列車は新たな時代を迎えたといえる。キーワードは「付加価値に見合った対価」だ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
11月2日、仙台に本社を置く東北地域ブロック紙河北新報が「寝台特急『あけぼの』は本年度で廃止」とスクープした。「本年度限り」とは、2014年春、つまり、2014年3月のダイヤ改正で廃止だ。なお、現時点(11月6日)でJR東日本からの公式発表はない。鉄道ファンをはじめとして、走り続けてほしい、嘘だと思いたいという声も多いが、この時期の報道は信ぴょう性が高い。
JRグループの場合、ダイヤ改正が報道各社に伝えられるタイミングは、鉄道会社の公式発表の10日から1週間前だ。事前に記者クラブに向けて改正の詳細を伝えるための「勉強会」が開かれ、そこから報道各社は情報の取捨選択を行い、予定記事を作る。情報が細密で膨大だからである。2013年のダイヤ改正の公式発表は2012年12月21日だった。つまり、12月10日ごろに「勉強会」が行われている。
ただし、ダイヤ改正の準備はもっと前だ。ダイヤ改正の直後には、次のダイヤ改正の準備が始まる。旅客動向を見極め、車両の老朽化や線路改良や保守の予定までを考慮しつつ、他の鉄道会社との連携も必要になるからだ。先送り、様子見となった列車の見直しを始め、他社にまたがる優等列車がまず決定され、自社の優等列車、ローカル列車の順に決まっていくという。
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