コラム
高齢者向けの商品が売れない理由:高齢者=弱者?(2/2 ページ)
なぜ売りたいのに、わざわざ売れなくなるような言葉を発してしまうのだろうか。ある会社は高齢者向けの商品を発売することになったが、「「高齢者はシニアとかシルバーとは呼ばれたくないので、そのような表現はしないようにしている」という。
もちろん、高齢を自覚させ、不安をあおるようにして、いらぬものまで売りつけるような行為はもってのほかであり、そういうやり方を勧めているのではない。また、介護度の進んだ生活弱者や貧困な高齢者がいるのも事実だ。周囲の高齢者もまた、衰えたとか体が痛いなどと口にする。しかし、これらは高齢者の一面でしかない。テレビや新聞はそういう面ばかり報じるから勘違いしてしまうが、現実には高齢者の非常に多くが、お金にも時間にも不自由しておらず、知恵も経験も豊富で、まだまだ判断力も向上心も十分に持つ幸福な人々だ。かわいそうだと考えたり、見下したり保護したりすべき対象だと決めつけるのは早計に過ぎる。
「顧客を育てる」時代である。いいものは、説明せずとも置いておけば売れるという時代ではなく、適切な情報を提供し続け、購入判断ができるようになるまで気付きや成長を促さねばならない。高齢者市場においても同じ。昔に比べれば、肉体的にも精神的にも若くなったと言われる高齢者に、せっかくの商品を買っていただくには、必要と分かるように説明することが重要なのである。それができるかどうかは、高齢者=弱者というパラダイムを転換できるかどうかにかかっている。(川口雅裕)
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