なぜコーヒーを“手渡す”のか? ローソンがセルフ式を捨てた理由:仕事をしたら“コーヒー”ができた(後編)(2/5 ページ)
いれたてのコーヒーをコンビニで買う、そういう人が増えてきた。多くのコンビニがセルフ式で展開する中、ローソンはスタッフによる“手渡し”。その理由は……。
吉澤: 当時の私はコーヒーの知識がほとんどなかったので、なにをしたらいいのか分かりませんでした。とりあえず、コーヒーを実験的に販売しているお店を回ることにしました。そこでどんな問題が起きているのか。課題を聞きたかったので「とりあえず、交通費だけください」とお願いしました。
そして“問題洗い出しの旅”に出るのですが、そこでビジネスモデルの原点を見つけることができました。「岡山の赤磐吉井店でコーヒーが売れている」という情報を聞いたので、なぜ売れているのかをリサーチしに行きました。そこの店長さんは気さくで、接客が素晴らしいんですよ。例えば、常連のお客さまが駐車場にクルマを停めるところを見ると、コーヒーを注ぎ始めるんですよ。もちろん、まだ注文は受けていません。なぜそんなことができるのか? 両者の間で信頼関係ができているからなんですよね。
コンビニといえば「合理性ばかり追求している」といったイメージがあるかもしれませんが、そこには古き良き昭和の風景がありました。常習性をかもしだす接客と、常習性が強いコーヒーを結びつけることはできないのか。赤磐吉井店をリサーチしてみて、ふとアイデアが浮かんだんですよ。これまでのビジネスモデルではなく、「接客(ホスピタリティ)」を武器にすることはできないのかと。
土肥: うーん、でも「コンビニの店員に、自分の顔を覚えられるのはイヤ。過剰な接客なんていらないよ」という人も多いのでは。
吉澤: もちろんそういう人もいらしゃるでしょう。ただコンビニというのは資金が同じであれば、同じような店舗、同じような商品になっていくでしょう。そうした時代がやって来たとき、どうすれば他社との差別化ができると思いますか? やはり「人」なんですよね。近くに競合店があっても、同じ商品を扱っていても、最終的には「この人から買いたい」となるのではないでしょうか。お客さまにとって、最適な接客とは何か。とことん研究しました。
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