なぜコーヒーを“手渡す”のか? ローソンがセルフ式を捨てた理由:仕事をしたら“コーヒー”ができた(後編)(1/5 ページ)
いれたてのコーヒーをコンビニで買う、そういう人が増えてきた。多くのコンビニがセルフ式で展開する中、ローソンはスタッフによる“手渡し”。その理由は……。
仕事をしたら“コーヒー”ができた:
「コーヒーはコンビニで買う」――。最近、こういう人が増えてきたのではないだろうか。
首都圏に住む20〜40代の男女に、コンビニコーヒーを利用したことがありますか?(関連記事) と聞いたところ、約半数の人が「利用したことがある」(49.9%)と回答した(朝日大学マーケティング研究所)。なーんだまだ半数の人は利用していないじゃないか、と思われるかもしれないが、利用経験のない人の35%が「機会があれば利用したい」と答えている。数字を見る限り、今後もこの市場の拡大が見込まれるのだ。
ところで、ひとつ気になることがある。コンビニコーヒーはどんな人が買っているのだろうか。「男性はコーヒー、女性はカフェラテ」をよく飲んでいるイメージがあるが、本当にそうした傾向があるのだろうか。そこでローソンのマチカフェを担当している吉澤明男(MACHIcafe・まちかど厨房部・部長)さんに、男女年代別に“売れている商品”をうかがった。
またローソンのコーヒーはどのようにして生まれたのか。ヒット商品が生まれるまでの舞台裏にも迫った。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。前後編でお送りする。
→ローソンのコーヒーはどんな人が買っているの? データから見えてきたコト(前編)
→後編、本記事
コーヒー事業は成功しなかった
土肥: ローソンのマチカフェを担当されている吉澤さんは、もともと本部でマーケティングなどを担当されていました。しかしイロイロなことがあって、中四国の岡山に赴任されました。東京の自宅を売って、不退転の気持ちで「がんばろう」と思っていたのに、1年後に本部から連絡があったそうですね。「東京に戻って、コーヒーを担当してくれないか」って。
吉澤: ローソンでは10年以上前から、コーヒーに何度も何度もチャレンジしてきました。でも、なかなかうまくいきませんでした。
土肥: それはなぜですか?
吉澤: そもそも「どういったコーヒーを出したらいいのか」「どういったビジネスモデルでやればいいのか」といった点が、きちんと決まっていませんでした。だから「コーヒーマシンはどういったモノにすればいいのか」「コーヒーの味はどういったモノにすればいいのか」といったことが決められなかったんですよ。
またプロジェクトも各部署の人が片手間にやっていました。なので本腰を据えてやることができない……そんな状態でした。
土肥: そこで吉澤さんに白羽の矢がたった。「コーヒー事業を立て直してくれないか? 君の力を借りたいんだ」といった感じで迎えられた。
吉澤: とんでもない。東京に戻されて「今日からよろしくお願いします」とあいさつしたものの、自分の机とイスがないんですよ。仕方がないので、他の部署のところで1カ月ほど“間借り”していました。
また予算もありませんでした。どうしたらいいのですか? と聞いたところ「自分で予算を取ってきてください」とのことでした。
土肥: 期待されていないですねえ(苦笑)。で、どうされたのですか?
関連記事
- ローソンのコーヒーは誰が飲んでいる? データから見えてきたコト
「コーヒーはコンビニで買う」という人が増えてきているが、一体どんな人が購入しているのだろうか。ローソンのPontaカードを分析すれば「どういった人が何を買ったのか」が分かるので、担当者に直撃。男性20〜40代がよく飲んでいるのは……。 - コカ・コーラのようなマーケティングが、日本でできない理由
とあるコンサルティング会社が発表した「企業のブランド価値」ランキングによると、「コカ・コーラ」が13年連続でトップ。日本企業を見ると、トップは「トヨタ」で10位どまりだ。Neo@Ogilvyの山崎浩人さんは、コカ・コーラはある特徴的なマーケティングをしているという。それは…… - なぜコンビニは人気のない「エッグタルト」を売り続けるのか
ローソンでスイーツの販売データを見せてもらった。それによると「エッグタルト」はあまり売れていないのに、店頭に並び続けている。人気のない商品は消えていくはずなのに、なぜ「エッグタルト」を売り続けるのか。 - ミドリムシが世界を救う? そんな時代がやって来るかもしれない
「ミドリムシ」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。「青虫」「ミトコンドリア」などを思い浮かべる人も多いのでは。ミドリムシを増やして、地球そして人類を救おうとしている会社がある。その名は「ユーグレナ」。社長の出雲充氏に話を聞いた。 - なぜ人は駅で買い物をするのか? 潜在意識を分析した
何気なく歩いていて、ついつい買い物をしてしまった。こんな経験をしたことがある人も多いのでは。なぜ人は移動中に買い物をしてしまうのか。生活者の購買行動などを分析している「ジェイアール東日本企画 駅消費研究センター」の担当者に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.