交通権ってなに? 画期的な法案が成立、私たちの生活はどうなる:杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)
私たちが「自由に移動する権利」が「生存権」とほぼ同格になった。2013年11月13日、衆議院国土交通委員会は、内閣が提出した「交通政策基本法」を賛成多数で可決した。大きく報道されていないが、これは日本の交通政策の概念を大きく変える法律だ。
交通政策基本法を読み解く
交通権を法で整備する動きは2009年ごろからあった。国土交通省は民主党政権になったばかりの2009年11月に「交通基本法検討会」の第1回を開催している。2011年3月8日には民主党政府から「交通基本法」の法案が提出された。しかしこの3日後、東日本大震災が発生し審議は先送りとなる。災害対策などで法案の優先順位が下がり、ついに会期終了となって同法案は消滅した。
自民党政権に移って、交通権の考え方は安倍政権も持っていたようだが、政府側から法案が出されなかった。そこで民主党は東日本大震災の教訓を基に、2011年の法案を練り直して2013年6月に再提出。これに呼応して内閣も法案を閣議決定し審議が再開。11月に可決された。国土交通省の公式サイトで「交通政策基本法」の全条文を閲覧できる(参照リンク、PDF)。
現在わが国が抱える諸問題のうち、少子化や過疎化による路線廃止など、交通政策で解決すべき問題が多々ある。そして、交通問題に対する行政について、交通利用者である国民を重視する施策に転換する必要がある。法律の目的は「国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展(第一条)」で、「交通施策の理念と実現のために、国などの責務を明らかにすること(第八条)」とある。つまり「移動する権利は国が責任を持って保証する」という考え方だ。
ここでいう基本理念とは「国民の基本的な交通を充足させる(第二条)」「交通によって環境負荷を軽減する(第四条)」「大規模災害発生時に交通を確保する(第三条)」「交通安全対策基本法と連携する(第七条)」などだ。これらを充足させる国の基本的政策は、「日常生活に必要不可欠な交通手段の確保等(第一六条)」「高齢者、障害者、妊産婦等および乳幼児を同伴する保護者の円滑な移動のための施策(第一七条)」など13項目に及ぶ。そのなかには「まちつぐり」「観光立国」などの言葉もあり、かなり広範囲に及ぶ。しかし重要な点はやはり「日常生活に必要不可欠な交通手段の確保等」が挙げられたこと、そして施策にあたって「国、地方公共団体、事業者、施設管理者、国民など関係者それぞれの責務」を定めるとしたところである。
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