今、農業に必要なことは? 農家は「考える」ことを止めさせられた:仕事をしたら“農業の今”が見えてきた(2/6 ページ)
「農業」と聞いてどんなことを想像するだろうか。「高齢者が作業をしている。変化がほとんどない」と思うかもしれないが、今、私たちの知らないところで“新しい動き”が出始めているのだ。それは……。
農家は「考える」ことを止めさせられた
土肥: 「農業」について、ずーーっと前からこう言われていますよね。「このままではダメだ。なんとかしなければいけない」「後継者がいない」などと。農業のことをよく知らない私には、課題がまったく解決しないまま今日に至っている感じがしています。実際のところどうなんでしょう? 農業の世界にも“転機”のようなものがあったのでしょうか?
西辻: ありました。ここでちょっと歴史を振り返らせてください。第二次世界大戦が終わったあとに、日本では「農地改革」がありました。学校の授業で習ったはずなので、この言葉は聞いたことがあるはず。当時は大きな地主さんに小さな地主さんが付いていました。しかしその制度を止めて、大きな地主さんは小さな地主さんに農地を配っていきました。
また国は「食料管理制度」(1995年に廃止)を基に、食糧の生産や流通などに介入していました。つまり、農家は管理されていたんですよね。やがてJA(当時は農協)という組織ができて、その枠の中で“みんなで何かを作ったらいいよ”という、いわば国策で農業が進められていきました。ということは、その枠の中にいる人はどうなっていったと思いますか?
土肥: そうですね……競争力が失われたとか?
西辻: 正解ですね。枠の中にいる多くの人たちは「考える」ことを止めてしまいました。いや、正確に言うと「考える」ことを止めさせられました。例えば「減反」という政策があるので、農地さえ持っていればそこで何をしなくてもお金が入ってくる。こうした状況に、多くの人は甘えていたのではないでしょうか。
ただ2007年に起きたリーマンショック後に、潮目が大きく変わりました。経済が急激に冷え込んだので、先行きに不安を感じた人が多かったのではないでしょうか。「これからの時代、どの産業がくるのか?」と考え、農業を選んだ人が増えてきたと感じています。
一般の人の間でも野菜作りなどが流行りましたよね。ベランダで家庭菜園を始めた人が身の周りにいませんでしたか? また私たちのような農業ベンチャーが数多く誕生しましたね。
土肥: リーマンショック後にできた農業ベンチャーは、その後どうなったのでしょうか?
西辻: 残念ながら、多くは消え去りました。
土肥: なぜですか?
西辻: 一番大きな原因はここ数年、毎年のように異常気象が続いているため。大きな台風が何度もやって来ると、農家にとってはものすごくツラい。また大企業が農業に参入して、価格競争で負けてしまった企業もありました。
関連記事
- ミドリムシが世界を救う? そんな時代がやって来るかもしれない
「ミドリムシ」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。「青虫」「ミトコンドリア」などを思い浮かべる人も多いのでは。ミドリムシを増やして、地球そして人類を救おうとしている会社がある。その名は「ユーグレナ」。社長の出雲充氏に話を聞いた。 - ライトノベルで農業を描いてみたらこうなった――『のうりん』著者インタビュー
現実と離れた題材が取り上げられることが多いライトノベル。そんな中、農業高校を舞台に大胆な筆致で農業に関わる人々を描いたライトノベル『のうりん』が静かに話題となっている。著者の白鳥士郎さんに、作品が生まれた経緯や反響について尋ねた。 - 農業がもうからないのは……マーケティング不足?
多額の補助金の投入が検討されている日本の農業。しかし、ちきりんさんは「農業がもうからない」と決め付けてはいけないと主張。「もっと、マーケティングを行ってみてはどうか?」と提案します。 - 1億2000万人の目を救う? まだ誰もつくっていない新薬の話を聞いてきた
眼科医として一流の腕を持ちながら、米国で製薬ベンチャーを立ち上げた男がいる。現在、まだ誰もつくり出せていない治療薬を開発中だが、新薬はどのようにしてできるのか。アキュセラ社の創業者・窪田良さんに話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.