住民投票での決着になるのか――宇都宮市のLRT計画:杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)
LRT(軽量軌道交通、新型路面電車)導入を推進してきた宇都宮市で、ついに市長が2016年度着工の意向を示した。導入反対の立場を取る「民意なきLRT導入を阻止する会」は住民投票を求めて署名運動を展開している。LRTの賛否、民意はどちらにあるのか。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
栃木県宇都宮市のLRT(軽量軌道交通、新型路面電車)計画は、市の中心部と東端を結ぶ約15キロメートルの路線だ。宇都宮市の東側郊外には2つの大きな工業団地があり、通勤時間帯の道路渋滞が問題となっていた。この路線のLRT計画について、2003年に栃木県と宇都宮市が共同による調査報告書を発表している。その後、栃木県は道路整備と鬼怒川の新規架橋による渋滞解消案に転じ、LRT推進は宇都宮市の専任事案となったようだ。
一方、富山市ではJR西日本の富山港線をLRT路線に転換する計画が進み、2004年に第3セクターの富山ライトレールが設立された。同路線が2006年に開業し成功をおさめると、全国でLRT建設の機運が高まる。国土交通省は2016年までに全国約10都市でLRTを整備したいという方針を示し、宇都宮市をはじめ、京都市や東京都中央区などで本格的な検討が始まった。
宇都宮市ではLRT推進派の佐藤栄一氏が2004年に市長に当選。2008年、2012年の市長選でも再選された。2008年からはLRT導入が基本政策のひとつに掲げられ、特に2012年の選挙はLRT導入が最大の争点とされた。佐藤氏の当選はLRT導入の民意の表れという見方もできる。その佐藤市長は2013年11月27日の定例記者会見で、2015年に国に対してLRT事業の認可申請を行い、2016年に着工したいと表明した。
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