観光客はどこに行ってるの? 位置情報のデータから分かったこと:仕事をしたら“人の移動”が見えてきた(前編)(2/5 ページ)
「観光客がどこに行っているかって? そんなの分かるはずがない」と思っている人も多いのでは。実は、ゲームやスマートフォンの位置情報を使って、“観光客の動き”が見えてきたという。大分県の湯布院や岩手県を訪れた人は、どんな特徴があるのだろうか。
湯布院に泊まった人
土肥: 位置ゲーの会員は319万人もいて、位置登録の回数は累計で20億回を超えているそうですね。膨大なデータが集まっていますが、「おでかけ研究所」の長谷部さんはその情報を分析されて、どんなことが見えてきたのでしょうか。
長谷部: その前に、1つ質問をさせてください。ドイさんは旅行をされるとき、何泊されますか?
土肥: ケース・バイ・ケースですね。1泊のときもあれば、連泊するときもあります。
長谷部: 1泊のときには時間が限られているので、行き先を絞りますよね。「ま、1泊だし、○○だけ行こうか」といった感じで。一方、連泊する場合は時間に余裕があるので、「○○に行って、次は○○に、そして○○も」といった感じで回りますよね。
土肥: ですね。
長谷部: 関東に住んでいる人が、大分県の別府・湯布院に行ったケースを分析してみました。一般的には1泊よりも連泊のほうが、観光地での周遊範囲は広がりますが、湯布院は違いました。1泊の人はあちらこちらに移動していて、連泊の人は温泉宿でまったりしているんですよ。
土肥: ほー、それは意外。1日に何度も温泉につかっているのかもしれませんね。
長谷部: このデータを大分県庁の人にお見せしたら、ものすごく驚かれました。「えっ、逆だったの!?」と。
土肥: 連泊するほどその場所にとどまる、というのは温泉地ならではの特徴でしょうか。
長谷部: だと思います。普通の観光地では、連泊すればいろいろなところに行こうと思いますよね。あっちに行って、こっちに行ってといった感じで。
で、このデータから何が見えてきたのか。観光客にはいろいろな所に行ってほしいから連泊させようとするのは、もしかしたら間違っているのかもしれません。このことを前提にすれば、これまでとは違う手を打つことができます。「とにかく連泊させれば、いろいろなところに行ってくれるだろう」という考えから180度違った手法がとれるかもしれません。
位置情報を分析すると、みんなが漠然と「そーだよね」と思っていたことが、実は違っていたといったケースがあります。モヤッとしていたものが数字で証明されるので、聞いている人は「なるほど、そうだったのか!」と思われるのではないでしょうか。
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