観光客はどこに行ってるの? 位置情報のデータから分かったこと:仕事をしたら“人の移動”が見えてきた(前編)(4/5 ページ)
「観光客がどこに行っているかって? そんなの分かるはずがない」と思っている人も多いのでは。実は、ゲームやスマートフォンの位置情報を使って、“観光客の動き”が見えてきたという。大分県の湯布院や岩手県を訪れた人は、どんな特徴があるのだろうか。
目に見えなかったラインが浮き彫りに
長谷部: 岩手県で最も人気のある観光スポットは? そう聞かれれば、「平泉」を挙げる人が多いでしょう。位置情報を分析したところ、やはり平泉を訪れる人が最も多かったですね。なーんだやっぱりかと思わるかもしれませんが、私たちは「平泉を訪れた人は、どこから来ているのか」「平泉を訪れた人は、次にどこへ行くのか」といった点を分析しました。
その結果、平泉に訪問した人の県内宿泊率は47.7%……半数に達していないことが明らかに。16時ごろにはそこから離れ、仙台市に戻ってしまう傾向が浮き彫りになりました。
土肥: うーん、平泉は仙台市に近いですしね。あと、仙台の夜は楽しいし……やっ、失礼。
長谷部: 平泉の近くに「猊鼻渓・厳美渓」(以下、猊鼻渓)があって、そこへはクルマで40分ほどで行けます。猊鼻渓まで足を運んでもらうと、県内宿泊率がぐーんとアップするんですよ。平泉に来た人の県内宿泊率は47.7%でしたが、猊鼻渓に来てもらうと61.6%にまで増えるんですよね。さらに北に位置する「花巻温泉」に行った人はどうか。県内宿泊率は77.4%と、かなりの割合で岩手県に泊まっちゃう。
土肥: 平泉に来ている観光客に、ビラを配るのはどうでしょう? 「猊鼻渓はええとこでっせ」と。ついつい大阪弁が出てしまいましたが、名づけて“客引き作戦”で。 あっ、こういうのはどうでしょう。「仙台→」という看板があったら、その隣に「←猊鼻渓」という大きな看板を置くとか。もうあの手この手を使って、猊鼻渓に行ってもらう。
長谷部: 岩手県庁の人も、なんとなく分かっていました。多くの観光客が平泉までしか来ていない、ということを。こうしたイメージや経験に基づく把握というのは、実は多くの自治体で見られます。ただそれだと具体的な手は打ちにくい。今回、位置情報のデータで定量的な事実が明らかになったので、具体的な施策は打ちやすくなったのかな、と思っています。
土肥: 岩手県側にとっては、とにかく平泉のラインを越えてもらいたい。一方、宮城県側にとっては、そのラインを越えてもらいたくない。これまで目に見えなかったラインが、位置情報のデータによって浮き彫りになったわけですね。
長谷部: 関東の人間からすると、平泉はイメージ的に“仙台圏”なんですよ。仙台に行ったから、「ちょっと平泉に行ってくる」といった感覚ですね。そこからちょっと足を伸ばして猊鼻渓まで行ってくる、となれば……。
土肥: “岩手圏”になるわけですね。
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