「上野東京ライン」成功のカギは、品川駅が握っている:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
JR東日本は上野駅と東京駅を結ぶ4つ目の路線を「上野東京ライン」として2015年3月に開業する。従来上野駅止まりだった東北本線(宇都宮線)、高崎線、常磐線の列車が東海道本線と直通する。ただし、この計画で重要な駅は上野駅や東京駅ではなく、品川駅だ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
2013年12月9日、JR東日本は「東北縦貫線の開業時期、愛称について」という文書を発表した(参照リンク、PDF)。東京駅の南北を直通する路線としては3つ目、東北新幹線を含めると上野―東京間に4つ目の複線が誕生する。開業予定は2014年度末。つまり2015年3月であり、毎年恒例のJRグループダイヤ改正と連動する形になる。
愛称は「上野東京ライン」とのこと。これは上野―東京間の線路そのものではなく、東京駅へ乗り入れる東北本線や常磐線の列車、上野駅へ乗り入れる東海道本線の列車に用いられる。大宮方面や横浜方面の乗客に対し、新宿経由の「湘南新宿ライン」との乗り間違いを防ぐという意味が大きいと思われる。
東北本線の長距離列車の始発駅は上野駅が常識だが、1914年に東京駅が開業して以来、東北本線の起点は東京駅となっていて、いまもそれは変わらない。それは当然のことで、そもそも東京駅は、政府が建設した東海道本線の新橋駅と、当時日本鉄道が運営していた東北本線の上野駅を結び、日本の中心となる駅としてつくられた。
ただし、東北本線の長距離列車の東京駅乗り入れは1983年に終了する。理由は東北新幹線を上野駅から東京駅へ延伸するためで、秋葉原―東京間の線路用地を新幹線に譲ったからだ。東北本線の長距離列車は東京駅に来ないから、東海道本線で東京駅に到着した客が東北本線に乗り継ぐためには、いったん京浜東北線か山手線に乗り換える必要がある。
東京近郊のベッドタウン開発により通勤圏が拡大すると、東北本線と東海道本線を乗り継ぐ中距離客の混雑が激しくなった。そこで2000年に当時の運輸省が設置した運輸政策審議会において「2015年までに上野―東京間の中距離電車用路線を開業することが適当」と答申した。首都圏の通勤需要は都心集中型だから、直通運転の費用対効果には議論もあっただろう。しかし、2001年から運行が開始された湘南新宿ラインの成功によって、都心通過需要が確認された。
これらの要素を元に、JR東日本は2002年に「宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転)」として秋葉原―東京間の路線整備計画を発表した(参照リンク)。これは後に「東北縦貫線」と通称され工事が着手された。その名前から、東北地方全体を貫く新幹線を連想するけれど、意味としては「東北本線を延長し東京圏を縦貫する」であろう。
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