「上野東京ライン」成功のカギは、品川駅が握っている:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
JR東日本は上野駅と東京駅を結ぶ4つ目の路線を「上野東京ライン」として2015年3月に開業する。従来上野駅止まりだった東北本線(宇都宮線)、高崎線、常磐線の列車が東海道本線と直通する。ただし、この計画で重要な駅は上野駅や東京駅ではなく、品川駅だ。
列車ダイヤはどうなるか
「上野東京ライン」の運行が始まると、どんな列車が走るだろうか。JR東日本は簡単な図面路線イメージの図だけで、具体的な運転計画は発表していない。そこで、JR東日本の過去の発表資料から予測してみよう。
2002年の本計画発表資料によれば、「宇都宮・高崎・常磐線の列車の一部を東京駅まで乗り入れる」。「利用状況を勘案して東海道線と相互直通運転を実施」。「朝通勤時間帯については宇都宮・高崎線からの乗り入れが基本」とある。つまり上野発着の列車すべてが東京駅に乗り入れるわけではないし、東海道本線との乗り入れも限定的という想定だ。また、常磐線については通勤時間帯の東京駅乗り入れの期待は薄そうである。
全列車直通運転のほうがスッキリするが、そうはいかない事情もある。運行本数のバランスの問題だ。平日7〜8時台の普通列車で比較すると、宇都宮線の上野着は16本、高崎線方面の上野着は17本、常磐線上野着は30本(快速を含む)で、合計63本。これに対して東海道本線の東京発は15本である。上野から北の本数に対して、東京から南の本数は半分以下の需要しかない。通勤時間帯の下り方向はガラガラだから、東海道線はこれ以上増やせない。逆方向も然りで、東海道線東京着が24本、上野発は44本となる。
このバランスから考えると、東海道本線の列車はすべて上野方面へ直通できる。しかし、上野からの直通列車はすべて東海道本線へ直通できない。宇都宮線・高崎線方面の複線と、常磐線の複線が合流して東海道本線になるわけだから、これは至極当然の成り行きだ。ただし、増発の余地はある。東海道線、高崎線、宇都宮線は、湘南新宿ライン誕生前はもっと本数が多かった。上野駅も東京駅も、物理的容量には少しゆとりがある。それに、列車が折り返さずに直通すれば、分岐器による交差が減るので上下列車のすれ違いがスムーズになり、運行間隔を短縮できる。
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