宮城、福島を訪れた人はいずこへ? 位置情報データが教えてくれたこと:仕事をしたら“人の移動”が見えてきた(後編)(2/4 ページ)
「観光旅行をした人は、どこに行っているんだろう?」。こんな疑問もゲームやスマートフォンの位置情報を使えば、“観光客の動き”が分かるという。宮城県と福島県を訪れた人の特徴を教えてもらったところ……。
松島の課題
土肥: 松島には課題がないわけですね。では、次に……。
長谷部: いえ、課題が全くないわけではありません。松島を訪れた観光客は、なかなか松島に泊まってくれません。泊まっているのは13.0%ですね。多くの観光客は16時ごろには松島を離れ、仙台に行ってしまう。ちなみに仙台に宿泊する人は31.0%。
土肥: 前編でも紹介しましたが、岩手県の平泉を訪れた人も仙台で泊まる傾向がありました。やはり、仙台の夜は魅力なわけですね(笑)。
ただ宮城県全体で考えると、“損”な話ではないですよね。松島には泊まってくれないかもしれませんが、同じ県内の仙台に泊まってくれるので、観光客のお金はそこで落ちる。
長谷部: 先ほども申し上げましたが、松島は沿岸部への周遊拠点として位置付けられます。なので松島に泊まってもらうと、次の日に「石巻に行って、気仙沼で泊まろう」といった人が増えてくるんですよ。しかし現状は、仙台に戻ってしまう人が多いので、「石巻には行かなくてもいいや」となってしまうんです。
松島の魅力を高めて、観光客の滞在時間を長くすることができれば、宿泊につながり、沿岸部への周遊にもつながるはず。お店を夜遅くまで開けてもらうなどして、ホスピタリティを高めることが必要かもしれませんね。
土肥: なるほど。
長谷部: あと、ちょっぴり「えっ」と思ったデータが出てきました。宮城県を訪れる観光客は鉄道を利用している人が多いと思っていたのですが、実はそうではなく、クルマで来ている人のほうが多いんですよ。
宮城県は、これまで鉄道客へのプロモーション活動で大きな成果を挙げてきましたが、今回の調査で、ほぼすべての観光エリアで高速道路を利用する人が多いことが分かってきました。今後は高速道路を運営するNEXCO東日本ともいろいろなことを進めていったほうがいいでしょうね。こちらにも集客のヒントが隠されていると思います。
関連記事
- 観光客はどこに行ってるの? 位置情報のデータから分かったこと
「観光客がどこに行っているかって? そんなの分かるはずがない」と思っている人も多いのでは。実は、ゲームやスマートフォンの位置情報を使って、“観光客の動き”が見えてきたという。大分県の湯布院や岩手県を訪れた人は、どんな特徴があるのだろうか。 - ローソンのコーヒーは誰が飲んでいる? データから見えてきたコト
「コーヒーはコンビニで買う」という人が増えてきているが、一体どんな人が購入しているのだろうか。ローソンのPontaカードを分析すれば「どういった人が何を買ったのか」が分かるので、担当者に直撃。男性20〜40代がよく飲んでいるのは……。 - ミドリムシが世界を救う? そんな時代がやって来るかもしれない
「ミドリムシ」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。「青虫」「ミトコンドリア」などを思い浮かべる人も多いのでは。ミドリムシを増やして、地球そして人類を救おうとしている会社がある。その名は「ユーグレナ」。社長の出雲充氏に話を聞いた。 - なぜ人は駅で買い物をするのか? 潜在意識を分析した
何気なく歩いていて、ついつい買い物をしてしまった。こんな経験をしたことがある人も多いのでは。なぜ人は移動中に買い物をしてしまうのか。生活者の購買行動などを分析している「ジェイアール東日本企画 駅消費研究センター」の担当者に話を聞いた。 - 宋文州氏が語る、日本人が「多様性」を受け入れられないワケ
日本に多様性は必要だと思いますか? こう聞かれると、ほとんどの日本人は「必要だ」と答えるはずだ。にも関わらず、なぜ日本では多様性を受け入れる考え方が広がらないのか。その疑問を、ソフトブレーン創業者の宋文州氏にぶつけてみた。 - コカ・コーラのようなマーケティングが、日本でできない理由
とあるコンサルティング会社が発表した「企業のブランド価値」ランキングによると、「コカ・コーラ」が13年連続でトップ。日本企業を見ると、トップは「トヨタ」で10位どまりだ。Neo@Ogilvyの山崎浩人さんは、コカ・コーラはある特徴的なマーケティングをしているという。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.