宮城、福島を訪れた人はいずこへ? 位置情報データが教えてくれたこと:仕事をしたら“人の移動”が見えてきた(後編)(4/4 ページ)
「観光旅行をした人は、どこに行っているんだろう?」。こんな疑問もゲームやスマートフォンの位置情報を使えば、“観光客の動き”が分かるという。宮城県と福島県を訪れた人の特徴を教えてもらったところ……。
位置情報データのメリット・デメリット
土肥: 長谷部さんには、岩手県・宮城県・福島県を訪れた観光客の“動き”を教えていただきました。位置情報のデータを使って分析されたわけですが、この手法のメリット・デメリットを聞かせてください。
長谷部: 各県はこれまでも、観光客への調査を行ってきました。街角にアンケート箱を設置したり、調査員が観光客に声をかけ聞き取りをしたり。だいたいこの2つのパターンなのですが、どちらも「バイアスがかかっている」とのことでした。
土肥: バイアス? どういうことでしょうか?
長谷部: 聞き取り調査では、どうしても観光客らしき人にしか声をかけないようです。例えば、2〜3人で歩いている人とか、ガイドブックを持って歩いている人とか。団体旅行の人たちには声をかけづらく、また観光客かどうか見極めがつきにくい人にも声をかけづらいようです。県側としては「もっと地元の人も来ているはずなんだけどなあ」と思っていたのに、なかなかアンケート結果には反映されてきませんでした。
ただ位置情報のデータを分析すると、地元の人も来ていることが分かりました。想像以上に地元の人が来ていることが分かってきたので、今後はそうした人向けにプロモーションができるのではないでしょうか。
土肥: 観光客が少ないところは、そもそも聞き取り調査が難しいですよね。聞きたいのに、誰もいない……という状況だと。
長谷部: ですね。
土肥: やがて調査員がいなくなる時代がやって来るかもしれない?
長谷部: 位置情報の分析にも、苦手なことがあります。例えば、観光客は何を目的にそこにやって来たのか。そこの何が魅力だったのか。といった定性的なことは分かりません。また、観光地でお金をいくら使ったのか、ということも分かりません。こうした部分は、まだまだ聞き取り調査には勝てません。今後は、聞き取り調査で得た情報と、位置情報で得た情報を、うまく組み合わせていくことが大切になってくるでしょう。
土肥: なるほど。まだまだ興味深いデータが出てくるかもしれない、ということですね。本日はありがとうございました。
(終わり)
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