2014年、注目の列車旅は? 四国・東北、そして:杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)
2014年の鉄道業界は追い風と向かい風が交互に吹きそうだ。観光列車ブームの継続は追い風、消費税アップに伴う運賃値上げが向かい風。新幹線のサービスアップは追い風、LCCの国内路線増は向かい風だろうか。今年も昨年に劣らず面白くなりそうだ。
四国でも新しい観光列車が登場する。JR四国は夏ごろの予定で観光列車「伊予灘ものがたり」を投入する。松山駅と八幡浜を結び、瀬戸内海を眺めるコースだ。松山駅と途中の伊予大洲駅までは海側と山側の2つの路線があり、特急列車は山側の内子(うちこ)線をバイパスする。観光列車は運行頻度の少ない海側の予讃(よさん)本線を行く。ルート上には青春18きっぷのポスターや映画、ドラマのロケ地として知られる下灘駅がある。レトロモダンをテーマとして改造したディーゼルカーを使い、食事も提供する予定。九州の「肥薩おれんじ鉄道」が運行する「おれんじ食堂」の四国版とも言える。
JR四国は他にもユニークな列車を投入する予定だ。四万十川に沿う予土(よど)線で、気動車の外観を初代新幹線0系に見立てた「鉄道ホビートレイン」が走り始める。こちらは3月から運行開始予定だ。予土線の開通40周年を記念して、車両検査日を除き窪川−宇和島間を毎日運行する。予土線にはすでにフィギュアで有名な海洋堂とタイアップした「海洋堂ホビートレイン」や、リニューアルされたトロッコ列車も運行中だ。本四架橋を四国の玄関とすれば、予土線はもっとも奥の部屋。予土線の観光開発はJR四国全体の旅客需要を引き上げる。
新幹線計画を推進した当時の国鉄総裁、十河信二は愛媛県西条市の出身で、伊予西条駅に隣接して十河信二記念館と四国鉄道文化館が並ぶ。この四国鉄道文化館には新幹線0系が展示されている。また、4月に南館が増設される予定となっている。高松−伊予・松山方面へは6月に新型特急車両も導入される予定。鉄道ファンは今年の四国に注目だ。
そして今年は、四国で大きな観光需要が生まれる。八十八ヶ所参りの霊場が開創1200年の節目の節目を迎え、寺院の特別開帳、記念スタンプ設置などイベントが用意されている。八十八ヶ所参りのスタート/ゴール地点は弘法大師によって開かれた高野山だから、こちらにも波及効果がありそうだ。昨年の式年遷宮、平成の大遷宮ほど広まっていないようだが、これから旅行番組などで注目されるだろう。
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