2014年、注目の列車旅は? 四国・東北、そして:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
2014年の鉄道業界は追い風と向かい風が交互に吹きそうだ。観光列車ブームの継続は追い風、消費税アップに伴う運賃値上げが向かい風。新幹線のサービスアップは追い風、LCCの国内路線増は向かい風だろうか。今年も昨年に劣らず面白くなりそうだ。
旅行会社、鉄道会社の企画力が試される年
昨年登場した観光列車群はデビュー2年目。人気は衰えないというものの、メディアへの露出は落ち着くから、企画力や宣伝の手腕が問われそうだ。そして気になる動向としては航空路線だ。ピーチ アビエーションは2月に関西−松山線を新設、バニラ・エアは昨年末の成田−那覇に加えて1月29日から成田−新千歳を新設、5月から春秋航空日本が成田を拠点に佐賀・広島・高松線で参入する。スカイマークも米子−神戸−茨城などで路線拡充を図っている。これらの格安国内航空路線は、着地型観光のクルーズトレインには好影響。新幹線など長距離列車とはライバル関係になる。
さらに注目すべきは、国内富裕層の列車旅志向が海外に向かうかもしれない点だ。「ななつ星in九州」は国内の列車旅需要を刺激したが、今年から大幅な値上げを実施する。富裕層の懐は大きいだろうから、ただちに空席にはならないと思う。むしろ定員の少なさ、運行日の少なさで需要を吸収しきれない。そうなると、「ななつ星in九州」に乗れなかった富裕層はどこへ向かうか。以前にも指摘したように、「ななつ星in九州」の50〜70万円台という価格からすると(関連記事)、往復航空券込みで海外のクルーズトレイン旅行が視野に入る。羽田空港の国際線発着枠が増えるなどの要素もあって、海外鉄道旅行への需要が高まりそうな気配を感じる。
最後に忘れてはいけない要素として、4月に実施される消費税率アップがある。鉄道会社のほとんどが値上げを予定している。そのため、JTBは3月までに旅行の駆け込み需要が起きると予測している。では4月以降はどうなるか。旅行会社にとっては、4月からのさまざまな好材料を組み合わせて、サービスの魅力アップで補っていくだろう。鉄道会社は普通運賃の値上げの一方で、魅力的な企画きっぷで需要を掘り起こしていく必要がある。
昨年の「ななつ星 in 九州」「しまかぜ」「E6系」のような派手な新型車両の登場はなく、式年遷宮のようなビッグイベントもない。来年は北陸新幹線の開業や、上野東京ラインの開通、JR東日本のクルーズトレインがデビューする。その狭間にある2014年は、「企画力」「見せ方」が試される年になるだろう。
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