安倍首相のアフリカ訪問に、なぜ中国はイラッとしているのか:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
安倍首相がアフリカ諸国を訪問したことで、中国がイライラしている。中国外務省の副報道局長が、定例会見で日本のアフリカ外交について問われ……。
日本とアフリカ諸国との関係
例えば一昨年から、中国国営放送の中国中央テレビ(CCTV)が、ケニアにアフリカ総局(CCTVアフリカ)を開設し、英語でアフリカ全域に関するニュース発信を行っている。といっても、そこは「報道の自由」がない国である。中国企業がいかにアフリカの発展に貢献しているのかというようなお手盛り報道も少なくない。
そんな中国国営メディアの傘下「グローバル・タイムズ」紙が、今回の安倍首相のアフリカ訪問について、こんな感じで報じた。
「2000年に中国アフリカ協力フォーラムが開催され、アフリカ大陸と中国の関係が急速に発展したのを機に、日本はアフリカに注目し始めた」
さらに記事は、中国とアフリカ諸国との関係は60年に及ぶが、日本とアフリカ諸国との関係は日が浅い、と続く。要するに、小日本は偉大な中国の背中を追いかけてます、という毎度おなじみのストーリーだ。
確かに、中国とアフリカの結びつきは古い。60年代のアフリカ諸国は欧米からの植民地支配をもろにひきずっており、そこから脱するために旧ソ連や中国の社会主義モデルを導入するという国もチラホラあった。
だが、申し訳ないが、日本とアフリカの関係は60年どころではない。例えば、アフリカの黒人国家で唯一独立を守りきったエチオピアは、1930年にすでに日本と修好通商条約が締結され、エチオピア皇族と日本の子爵(ししゃく)の娘が結婚するという話もあったほどだ。この親交の背景には、当時は当たり前だった「白人が有色人種を支配する」という国際ルールをひっくりかえした日本に対する、アフリカ諸国の期待があった。
両国の親交は日本が敗れてからも変わらない。戦後、初めて宮中晩餐会に招かれた国は、日本が大好きな米国でも、アジアの親日国でもない。1956年、日本を訪れたエチオピア皇帝ハイレ・セラシエ一世である。
つまり、東西冷戦や内戦によって近年、日本とアフリカの関係が疎遠になっていたのは事実だが、民間レベルで支援や交流を続けてきた日本人はごまんといる。
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