赤ちゃんポストに預けられた子供が「ポスト」と名乗るドラマの何が問題なのか?:窪田順生の時事日想(1/3 ページ)
テレビドラマ『明日、ママがいない』が物議を醸している。ドラマに出てくる児童養護施設の描写が実態とかけ離れているなど、批判の声が。しかし問題はストーリーだけでなく、このドラマを制作したテレビ局にも……。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
日本テレビで放映中のドラマ『明日、ママがいない』が物議を醸している。
きっかけは、第1話放映後、日本初の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が設置されている慈恵病院(熊本市)が記者会見を開き、児童養護施設の描写が事実と大きくかけ離れていることや、主人公が赤ちゃんポストに捨てられた過去から「ポスト」というあだ名で呼ばれていることなどを、「施設の子どもや職員への人権侵害」」と批判したことだった。
確かに、三上博史さん演じる施設長に、「お前たちはペットショップの犬と同じだ」と言わせるなど、このドラマにはダイナミックな演出が随所にほどこされているが、番組最後のテロップに記されているように、「あくまでフィクション」である。ゆえに、「こんな抗議を認めちゃったらドラマなんてなにもつくれないじゃん」として過干渉だという意見も多い。
だが、児童養護施設の現実を知る人たちから実際に話を聞いてみれば、ネット上で議論されていることと、当事者たちが問題視していることが異なることに気づく。
例えば、坂本博之さんという日本王座や東洋太平洋ライト級王座も獲得した元プロボクサーがいる。児童養護施設出身ということで、かつての自分と同じ境遇の子どもたちを勇気付けるため、ジム経営のかたわらで全国の施設に精力的に足を運んでいる人物だ。
そんな坂本さんに今回の騒動について率直にどう思っているのか聞いてみると、こんな言葉が返ってきた。
「僕がこれを聞いて最初に心配したのは、施設から学校へ通っている子どもたちが、周囲から『お前の施設もあんな感じなのか』などと誤解されてしまわないかということです。ドラマというものがつくり物だというのは大人の理屈であって、高学年くらいになれば理解できるかもしれませんが、低学年くらいはまだドラマと現実の区別がつきません」
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