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赤ちゃんポストに預けられた子供が「ポスト」と名乗るドラマの何が問題なのか?窪田順生の時事日想(3/3 ページ)

テレビドラマ『明日、ママがいない』が物議を醸している。ドラマに出てくる児童養護施設の描写が実態とかけ離れているなど、批判の声が。しかし問題はストーリーだけでなく、このドラマを制作したテレビ局にも……。

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「営利企業」と「社会の公器」

 しかし残念ながら、ご本人たちにその自覚があるかは疑わしい。

 覚えている方も多いと思うが、2013年11月、TBSが慈恵病院の全面協力のもと、『こうのとりのゆりかご「赤ちゃんポスト」の6年間と救われた92の命の未来』というドラマを放映している。「あまちゃん」で注目を集めた薬師丸ひろ子さん主演ということもあり、関東での視聴率は13%超。文化庁芸術賞優秀賞も受賞するなど大きな話題となった。

 そんな“慈恵病院公式ドラマ”の直後、「ポスト」を名乗る主人公が、「ペットショップの犬と同じだ」とののしられるドラマを放映すれば、クレームが入るのは誰でも予想できる。

 にもかかわらず、ダマテンで放映に踏み切ったということは、ワーワー文句を言われても、放映中止に追い込まれるような事業リスクはない、むしろ議論が活性化することで、過去の野島ドラマ『高校教師』や『家なき子』のようなブームを起こせるかもしれない、とソロバンを弾いたからだ。

 そんな「確信犯」ぶりは、声をあげることができない心に傷を負った子どもたちの代わりに抗議をした慈恵病院を、「まあとにかく黙って最終話まで見てよ」とハナから相手にしなかった対応からもうかがえる。

 日本のテレビ局は、どんなあざとい手を使っても視聴率をたたき出す「営利企業」と、「社会の公器」という相容れない2つの仮面を使い分け、どうにかここまでやってきた。

 いい加減、善人ぶるのがバカらしくなってきたということかもしれない。

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