ソニーから学ぶ 事業撤退の「引き際」:数字のオモテとウラを学ぶコラム(4/4 ページ)
ソニーが「PC事業からの撤退」を発表した。経営陣のこの判断は“正しかった”のでしょうか。決算資料などから「事業撤退のタイミング」について考察しました。
以上のことを考慮して、ひと言でまとめると、従来に比べて「高く売ることも、たくさん売ることも、安く作ることも難しい」。これがソニーのPC事業の現状なのです。VAIOというブランドイメージが十分に威容を保っている今のうちに、売却・撤退を考えるという判断は、“英断”とも言えるでしょう。
「事業の撤退」というと非常にネガティブな印象が付きまといます。特にVAIOを長年愛用していたユーザーからしたら、「もうソニーのVAIOは出てこないのか……」と感傷的になってしまうのも無理からぬところ。しかし企業の経営は常に、限られた経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を、少しでも魅力的な市場に配分するという判断が求められているのです。
今回のプレスリリースでもまさに、スマートフォン、タブレットに注力するという経営陣の意思が現れており、時代の流れを明確に捉えた姿勢は評価すべきだと思います。
新しい分野に常に挑み続けるという点で、ソニーは比較的上手に主力商品を生み出し続けています(あるいは、続けていた)。ソニーを世界的企業に押し上げたウォークマンに始まり、ゲーム界に革命を起こしたプレイステーション、デザイン性の高さで定評のあったVAIO、DVDに取って代わりうる媒体のBlu-ray、そしてAndroidスマートフォンでよく売れているXperiaなど。1つ1つが世に「驚き」をもたらしてきたわけです。
そして、これらの新しいモノが世に出されるときには、古い何かが取捨選択されていることが多く、今回のVAIO撤退報道も、あくまでもそういったバイオリズムの一環なのだ、という捉え方もできなくはありません。
主力商品は時代によって移り変わっていきますが、1つ1つの商品はソニーの「遺伝子」を受け継いでいるはず。私たちはVAIOの撤退を悲しむことよりも、今後ソニーから新しい商品が生まれてくる――そこに期待すべきでしょう。
関連記事
- セブン&アイが、過去最高益を計上した理由
セブン&アイ・ホールディングスが、2013年3〜11月第3四半期で過去最高益を計上しました。同社は誰もが知るコンビニやスーパーのチェーン店を抱えていますが、なぜこのタイミングで最高益を実現することができたのでしょうか。決算短信を見ると……。 - なぜサッカーで八百長が起きるのか――不正のメカニズム
先日、ICPO(国際刑事警察機構)主催の、とある会議が開催されました。議題は「サッカー界における八百長の防止対策」。八百長といえば、少し前に日本でも大相撲が話題になりましたが、どうやらサッカー界のそれは大相撲の比ではないようです。 - なぜコンビニのクリスマスケーキは売れるようになったのか――知られざる裏事情
数年ほど前から、コンビニのクリスマスケーキが売れている。理由の1つに「おいしくなった」ことが挙げられるが、それだけでもないらしい。大手コンビニの本部で働き、現在はコンビニオーナーを務める筆者が裏事情を明らかにした。 - ローソンのコーヒーは誰が飲んでいる? データから見えてきたコト
「コーヒーはコンビニで買う」という人が増えてきているが、一体どんな人が購入しているのだろうか。ローソンのPontaカードを分析すれば「どういった人が何を買ったのか」が分かるので、担当者に直撃。男性20〜40代がよく飲んでいるのは……。 - コカ・コーラのようなマーケティングが、日本でできない理由
とあるコンサルティング会社が発表した「企業のブランド価値」ランキングによると、「コカ・コーラ」が13年連続でトップ。日本企業を見ると、トップは「トヨタ」で10位どまりだ。Neo@Ogilvyの山崎浩人さんは、コカ・コーラはある特徴的なマーケティングをしているという。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.