貿易赤字が膨らむ日本、国債信用に更なる危機:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
日本の国際収支を表す経常収支が財務省から発表された。辛うじて黒字を保っているものの、貿易赤字は膨らむ一方だ。政府が財政再建の道筋を示さなければ、ヘッジファンドに日本国債を売られてしまうリスクがある。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
東京都知事選が終わった。結果を見れば、舛添要一元厚生労働大臣の圧勝である。しかしこの盛り上がりのなさは何だろう。投票日の前日に大雪が降ったこともあるのだろうが、これから東京都が抱える問題に誰も答えていないというもどかしさもあったのかもしれない。今はまだ国から地方交付税交付金を受け取らなくてもやっていける東京都の財政もやがて大赤字になるリスクがある。高齢化問題だ。
同じように日本という国にも大きな危機が近づいている。2011年から赤字になった貿易収支が年を追うごとに赤字が拡大し、2013年にはとうとう10兆円を超えた。赤字が膨らんだことも重要だが、それまで32年間も貿易黒字を維持してきたことを忘れてはならない。元来、日本はまさに「輸出立国」だったのである。
とはいえ、貿易赤字が巨額になっても、国の国際収支を表す経常収支は2013年も辛うじて黒字を保った。2月10日に財務省が発表したデータによると、貿易赤字が約10兆6000億円(前年比4兆8000億円の増加)になったが、所得収支(直接投資による配当金や証券投資に伴う債券利子など)が約16兆5000億円と1985年以降で最大になったため、経常収支は3兆3000億円の黒字になった。
貿易収支が赤字になったのは、国内の原子力発電所がすべて停まったために液化天然ガスの輸入が増えたことが主な原因だ。また、円安になったことで輸出競争力が上がったにも関わらず、輸出の増え方が輸入に比べて小さかった。輸出が増えないのは、日本企業の海外進出が進んだ結果である(所得収支が増えている1つの理由も、企業の海外進出が進んだためだ)。
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