企画を競って業界全体を盛り上げよう――「鉄旅オブザイヤー2013」審査後記:杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)
「鉄旅オブザイヤー2013」というコンテストがある。国内旅行会社が企画、実施した鉄道ツアーの優秀作品を選び、表彰するというもの。2011年から始まり、今年で3回目。さて、今年のグランプリに選ばれたのは……。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
私は旅好きであり鉄道好きでもある。そんな私の旅や鉄道の記事、本コラムのような論評をご評価いただいて、今年から「鉄旅オブザイヤー」というコンテストの審査委員を拝命した。旅行会社が企画した鉄道をテーマとしたツアー企画について、どれが優秀か選ぶという趣旨だ。
私はどちらかというとツアーよりも一人旅を好み、カッコよく言えば自分の旅をプロデュースしている。とはいえ、旅の企画については素人の範疇(はんちゅう)だ。そんな私が、旅のプロによる作品を評価するとは恐れ多い。
けれども、全国のユニークな鉄道旅行企画をまとめて拝見するチャンスはめったにない。これは勉強になりそうだと厳粛にお引き受けした。いや、正直に言うと、推薦者から「表彰式に出席すると、その日は鉄道博物館に無料で入館できますよ。お弁当付き」と聞き、喜んで受諾したわけだ。
鉄旅オブザイヤーとは
鉄旅オブザイヤーの目的は、以下の通りである。
旅行のプロが、企画性やオリジナリティにこだわって造成した国内の優れた鉄道旅行商品に対して表彰を行い、「鉄道旅行」ならではの魅力を発信することで、鉄道旅行及び国内旅行のプロモーションに資する。(参考サイト)
主催者は「鉄旅オブザイヤー実行委員会」だ。その委員は一般社団法人日本旅行業協会、鉄道旅客協会から抜てきされる。日本旅行業協会は「観光庁長官登録または都道府県知事登録の旅行業者」が加盟する組織で、会員会社数は1000社以上。JATAの略称があり「JATA 旅博」の主催団体でもある。鉄道旅客協会はJR券の委託販売会社である旅行会社約80社で構成する組織だという。後援企業はJR旅客会社各社と一般社団法人日本民営鉄道協会、社団法人日本観光振興協会など。国内旅行会社と国内のほとんどの旅客鉄道会社が関わっている。
ツアーを企画した旅行会社がコンテストに応募すると、実行委員会によって一次選考が行われる。「ロングバケーション部門」「鉄道イベント部門」「ローカル線活性化部門」「鉄道旅情部門」「鉄ちゃんも納得部門」それぞれの分野で3つか4つの企画を選出し、私たち外部審査委員に送られる。審査員は評価シートの項目にそって採点し返送する。その合計点で「グランプリ」「準グランプリ」「ルーキー賞」「審査員特別賞」が決定される。
審査委員は鉄道や旅についてご活躍の方々だ。審査委員長は俳優で、NHKの鉄道旅番組でも有名な関口和宏氏。ほかに旅雑誌の編集長、観光系の大学准教授、通信社の記者、旅や鉄道をテーマとするシンガーソングライター、タレント、フォトライター、鉄道バー店主など。著名な方ばかりで、このうち授賞式当日に出席された方々にはご挨拶させていただいた。恐縮しつつも、得難い経験であった。
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