企画を競って業界全体を盛り上げよう――「鉄旅オブザイヤー2013」審査後記:杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)
「鉄旅オブザイヤー2013」というコンテストがある。国内旅行会社が企画、実施した鉄道ツアーの優秀作品を選び、表彰するというもの。2011年から始まり、今年で3回目。さて、今年のグランプリに選ばれたのは……。
鉄道旅行を盛り上げるために
鉄旅オブザイヤーのエンリー作品は、各旅行会社の担当者が自分の企画を応募している。今回の応募総数は88作品あり、うち17作品が実行委員会の一次審査をパスした。応募作品のタイトルはすべて公開されている(参照リンク)。エントリーした会社は大手旅行会社もあれば、地域に根ざした中堅会社もある。落選した71作品のタイトルを検索してみたが、残念ながら募集が終わったツアーの情報はほとんど削除されていた。17作品に比べて何が足りなかったのだろうと気になった。
私は、対象期間である2012年11月〜2013年10月に催行された鉄道ツアーが88作品もあること、そのほとんどを知らなかったことにショックを受けた。その中には、事前に知っていれば参加したかった作品がいくつかあった。応募されなかった作品もあるかもしれない。私は鉄道関連会社の情報をくまなくチェックしており、大手旅行会社のプレスリリースページも巡回している。その情報網から漏れる作品がたくさんあった。
それもそのはずで、大手旅行会社といえどもすべてのツアーをプレスリリースするわけではないし、中堅会社の場合はネットではなく、店頭や新聞チラシ、顧客向け冊子やDMで募集する事例もある。これはモッタイナイ。地方の旅行会社が、地元のローカル線をテーマにした旅行企画を立ち上げても、広く知らしめる手段がない。自社サイトに載せても、そのサイトにたどり着く人が少なければ注目されないという現状だ。
鉄道旅行のポータルサイトとしては交通新聞社の「トレたび」がある。このサイトはJR旅客会社が協力しており、ここに掲載される旅行商品はJRグループ主催のものが多い。それまでJRグループを横断する情報サイトはなかったので「トレたび」の功績は大きいとはいえ、残念ながら日本のすべての鉄道旅行を網羅するにはいたらない。
あるいは「鉄旅オブザイヤー」のサイトが旅行ポータルになればいいと思った。しかし、「鉄旅オブザイヤー」は優秀作品に授与されるブランドだから、未実施のツアーの告知にはふさわしくないとも思う。
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