女性が職場で活躍できる制度を整えると女性は活躍しなくなる?:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/2 ページ)
働く女性、特にワーキングマザーのために支援制度を作るとフリーライダー問題が発生する。制度にタダ乗りしたり悪用したりする人が現れて問題……そんな話を聞いたことはありませんか?
女性の敵は女性である、という台詞まで飛び出すカオス
「そうはいっても、組織には、より役立つ人と、それほどでもないという人がいる。それらを同一に扱うということは無理があるし、なにより、貢献度の高い人には、引き続き働いてほしいと考えるのが、自然でしょう。その人たちのために用意した制度に、ただ乗りする人がいたら、やっぱり嫌な気分になりますよ。お金の無駄遣い、という気がします」
さらに興味深いのは、制度を用意して、一定の利用者を超えるとモラルハザード(=ここでは倫理の欠如という意味での使用)が起きるという点です。誰もが活躍を認めているような女性が、支援する仕組みを利用している間は何も文句は出ない。しかし、そうではない女性が使い始めると、仕組みを運用するために生じる組織内の負荷に対して、大きなクレームが出るというのです。
企業が用意している女性に対するサポートの多くが、例えば、時短で働くといった仕組みは、組織のほかの人が、その人が働けなかった時間を負担して支え合うという構造になっています。どこかで「この忙しさは、私に原因があるのではなく、あの人が時短制度を利用しているから」と、支え合いに対して負担を感じる人もいるでしょう。
誰もが一目置く人の支えなら「仕方ない」となるのでしょう。しかし、自分と同等、もしくは自分より仕事ができない、という人の仕事を引き受けるのは納得できない、という気持ちになる。実際、複数の人事担当者から「そうなると、組織が機能しません。結果的に、女性の敵は女性だという議論にまで発展してしまって、なかなか着地点が見いだせなくなるのです」と聞きました。
国は女性が輝く=バリバリと働いている状態、と考えている?
ここで視点を少し変えてみましょう。国はどう考えているのでしょうか。首相官邸のホームページをのぞいてみると「女性が輝く日本へ」なるページが用意されていました。女性が輝く=仕事をする、ということでは、必ずしもないと思うのですが、ここでは「日本の経済成長戦略」の一環として、女性に働いてもらう=女性が輝く、というように定義されているのがよく分かります。
「待機児童の解消」、要は働きたくても、小さな子供がいて働けないお母さんに対しては、子供を預ける場所の不足を、可及的速やかに解消しますと宣言しています。緊急収集取組や取組加速期間という表現が、その意思の強さを表しているのでしょう。横浜市の成功事例をかかげ、同じようにする、急いでやるのだという内容に、この問題に悩んでいるお母さんたちの期待も高まるはず。
さらに「女性役員・管理職の増加」を、具体的な数値まであげて取り組むよう企業に要請しています。人事院の総裁に女性が始めて登用されたとニュースになっていましたが、国としては模範を示した格好なのでしょう。意地悪な視点でみれば、これもやはりバリバリと働くことが重要だ、という見方をする人もいるでしょう。ただ、待機児童の解消ほどは、具体策がない。
次に用意されている「職場復帰・再就職の支援」に至っては【育児休業した労働者の円滑な職場復帰を支援し、「女性が働き続けられる社会」を目指します】として、「能力アップ訓練」や「能力開発」「教育プログラム」という言葉が踊っています。しかし、これにしても、円滑な職場復帰のために、どんな能力が必要なのか、ということはわからないままです。ぼんやりしています。
ダイバーシティとインクルージョンという視座視点
ここまでの話で、これからの企業、そして、私たち働くひとたちが考えなければならないのは、もっと早く「働き方の多様化が必要だ」ということが重要であるという認識です。多くの場合、働き方が一つ、ないしは、二つ程度に類型化されてしまって、それをもって仕組みが作られてしまう。効率という観点からは仕方ないのかもしれませんが、これからの世の中には適応しにくい。
いろんな働き方をする、いろんな考えの人がいる。気取った言い方をすると、ダイバーシティとインクルージョンでしょうか。その状態を受け入れて、活躍する仕組みを作るのは、骨が折れるはず。けれども、ここらでキチンと考えないと、いつまでたっても「働く女性の敵は女性だ」なる、本当に心が痛くなる悲しいフレーズを、耳にし続けなければならないのです。
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