最近よく耳にする「お台場と沖縄にカジノができる」報道の読み方:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
最近、「カジノ解禁へ向けた動きが本格化」というニュースをよく耳にする。「日本国内でカジノができるのは2カ所。東京のお台場、沖縄が有力だ」といった声も聞くが、本当にそうなのか。カジノ解禁の裏には、いろいろな思惑がからんでいるようで……。
「お台場カジノ」と「沖縄カジノ」
一方、「リゾート型」で沖縄の名が挙がるのはさまざまな理由がある。
まずよく言われるのは、実現へ向けたハードルの低さだ。2007年に仲井真知事が、国会でカジノ法案を通すよりも、「沖縄振興特別措置法」を改正してカジノ導入を盛り込んでしまったほうがてっとり早いじゃん、みたいな発言をして物議を醸したが、今でも同様の考え持つ地元政治家は多い。
この背景には、観光ビジネスの低迷がある。リゾートアイランドといいながらも、やってくるのは日本人ばかりで1人当たりの観光消費も少ない。全国でもずば抜けて高い失業率に悩む沖縄の観光業者からすれば、外国人を呼び込めるIRは“起死回生”のチャンスなのだ。そこに加えて最近では、「普天間基地移設問題」も関係してくる。
県内であれ県外であれ、基地を動かせば地域経済は確実にダメージを受ける。それを軽減するにはIRをつくるしかないでしょ、なんて意見が県内、特にキャンプキンザー移設跡地(浦添市)で盛んに持ちあがっているのだ。
このような調子で、まことしやかに囁かれる「お台場カジノ」と「沖縄カジノ」だが、個人的には巷で言われているほど本命ではないと思っている。
まず、「お台場」に関しては、HISの澤田会長らが主張するように、首都・東京にいきなりカジノリゾートという日本人が運営したことのないリスキーな施設をドカンとつくってしまっていいものかという問題がでかい。
「東京五輪開催に合わせてカジノでおもてなし」なんて気の早い人たちはソロバンを弾くが、これからの集団的自衛権の議論次第では、東京五輪だってテロのターゲットになる可能性は大いにある。そんな状況下で、マフィアやらマネロンやらの恐れがあるカジノをつくったら収拾がつかない、なんて反対意見は当然出るだろう。
沖縄も然りだ。かの地では、1990年代後半からカジノ誘致を進めてきたという実績がある半面、「カジノ反対運動」の蓄積があり、筋金入りの闘士も多い。その代表が、糸数慶子参議院議員だ。「カジノ誘致に反対する女性の会」なんてのをつくったりして、もうかれこれ10年以上、反対キャンペーンを続けていらっしゃる。
基地問題でも分かるように、沖縄における「反対運動」は日本全国から左巻きの人たちが住民票ごと集結してくることで知られている。「基地を押し付けた後は、ギャンブルを押し付けるのか」なんてワーワーとシュプレヒコールがわきあがることは十分に予想できる。というよりも、その兆候はすでにマスコミにはあらわれてきている。
関連記事
- ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか
従業員を劣悪な環境で働かせ、使い捨てにする――。いわゆるブラック企業が社会問題になっているが、なぜそこで働く人は会社を辞めようとしないのか。その背景にあるのは……。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由
気鋭のジャーナリスト、上杉隆氏、相場英雄氏、窪田順生氏の3人が、Business Media 誠に登場。「政治評論家に多額の資金が渡った」と指摘されている官房機密費問題や、メディアが抱える問題点などについて語り合った。 - 「カジノ王VS. 朝日新聞」の行方が日本経済に影響するってホント?
あまり話題になっていないが、実は今、日本経済を左右する死闘が繰り広げられている。それは、パチスロ界の雄「ユニバーサルエンターテインメント」と「朝日新聞」のバトルである。両社が争っていることとは……。 - 最近のフジテレビはなぜ「シンガポール推し」なのか
最近のフジテレビが「シンガポール推し」であることをご存じだろうか。「めざましテレビ」のあるコーナーではシンガポールネタが目立つ。映画『謎解きはディナーのあとで』でも舞台はシンガポール。ここまで取り上げると、なにやらオトナの事情があるようで……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.