新社会人に贈る言葉――自ら選択肢を作り出し、仕事を選べる30代になれ:INSIGHT NOW!(1/3 ページ)
仕事は「しんどい」もの。そこを「しんどいけど面白い」「厳しいけど充実している」にできるかが大事なのです。そのために必要な考え方をお話ししましょう。
著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。
この春、新しく社会人となり、晴れて職業を持つみなさん。おめでとうございます。これから何十年と続く職業人生の出発にあたって、大切なことをお伝えしようと思います。
みなさんは当面、仕事の“内容”を選べるわけではありません。会社から言い渡される仕事をただ引き受けてやるだけです。しかし、仕事の内容は選べなくても、仕事との“関わり方”は自分でどうにでも決められるものです。
自分で仕事を作り出すという意識。「なぜこの仕事をするのか」という強い意味付け。仕事を“自分ごと”として責任を持つこと――こうした意識を持つことで、日々の働く景色はまったく違ったものになります。ここはとても大事なポイントですから、しっかりと頭に入れてください。また、前編では触れませんでしたが、「いつかは独立する」と考えて働くことも大きなポイントです。
“雇われない生き方”を志向することの大切さ
私は11年前に会社勤めをやめて起業しました。今の私にとって、日々の仕事や事業はまぎれもなく“私のもの”です。自分の一挙手一投足が事業に影響を与えますし、コピー用紙1枚を使えば、確実に自分の稼ぎからその分のお金が減ります。そのため、自分の仕事に対して責任においても、経済的にも100%責任を意識している――というか意識せざるを得ません。
雇われる生き方を選択した会社員は、仕事の責任感にかなりの開きが出ます。役職が上がるほどこの度合いが高まるように見受けられますが、管理職クラスでも会社への“ぶら下がり意識”が強い人はいますし、役員クラスでも、仕事を「会社の金を使って行うマネーゲーム」のような感覚でやっている人もいます。逆に、若い社員でも自分の役割をチーム全体の中で認識し、前後の工程を考えて、責任と自覚を持って仕事をまっとうしようとする人もいます。
仕事の責任を高めることはもちろん大切ですが、もっと言えば、人生で一度は“雇われない生き方”をやってみようという気概を持って働き続けるのが理想です。今の日本では多くの人が、職業を持つことを雇われて給料をもらうことであるかのように考えています。生計を立てるために、常に「どこかに雇われなければ」と働き口探しに神経を使う人が多いのですが、実際は専門職として独立したり、会社を興したりと、誰かに雇われずに生きていく道もたくさんあるのです。
私は米国の大学院に留学したとき、卒業後に起業する人が多いことに驚きました。「会社員に戻ろうなんてとんでもない。独立するために、こうして大学院に来て自己投資している」という血の気が多い30代がたくさんいます。一方の日本では、みんなが「雇われたい病」「雇われなければ不安症」に陥っているかのようです。
本当に起業するかどうかは別にして、少なくとも「好機あらば独立してやるぞ」という心の仕掛けを保つことで、日々の働く景色はまったく違ったものになります。私は会社員最後の5年間は管理職に就いていました。職人気質の私は、組織を管理する仕事を好きになれませんでしたが、独立しようと思ってからは、意識ががらりと変わりました。
「自分の会社を作るときのために、この管理業務は不可欠のものだ。だからいまのうちに何でも吸収しておこう」となったのです。日々の仕事が、ヒト・モノ・カネの管理業務のノウハウを学ぶ格好の場に変わった瞬間でした。「いつか独立しよう」という意志を持つ者は、毎日を漫然と過ごさなくなるのです。業務の一つ一つが深い意味を帯びてくることを実感するでしょう。みなさんには、これからの職業生活をそう送ってほしいと願っています。
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