まるで“時限爆弾”――女性の「溜める」心理、その傾向と対策:女性脳と男性脳の論理(4/4 ページ)
ビジネススクールで論理思考を教える“男性脳”の筆者が、摩訶不思議な存在である女性と女性の脳を観察、分析する。今回は、筆者の背筋の寒くなる経験から、女性の「溜める」について。
論理思考的にMECEに考えてやろうじゃないか
ここで仮説を整理しておこう(仮説は前回からの続き番号)。
- 仮説5:女性は、将来の勝負に備えて、自分が勝てる事象を「溜めておく」
- 仮説6:これ以上勝負する必要がない場合は「忘れる」
そこで2つの疑問が湧く。
- なぜ、男性は溜めないんだろうか?
- 何とかして、女性が溜めているものを忘れてもらう方法はないのか?
まず1.から考えてみる。仮説5が正しいとして、男性が溜めない理由を考えてみる。せっかくだから論理思考的に、MECE(ミッシー/ミーシー、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略)に考えてみよう。すなわち、見落としがないよう「もれなくダブりなく」考えるということだ。例えば、こんな感じだ。
- A:未来に勝負事が発生するのを予見しているが、材料がなくても論理構成などの力で勝負に勝てると確信しているから
- B:未来に勝負が発生するのを予見しているが、その類の勝負で勝つことを目的としていない
- C:そもそも、未来に勝負事が発生すること自体を予見していない
女性と口論した経験がただの一度もない男性は別として、女性が「溜めている」ために反論できない状況を経験した男性にとっては、Aの「勝てる確信」というのはない。また、Bの「勝つことを目的としていない」というのもあり得ない。あの痛手を一度でも経験したら、そんな甘いことを考えるはずがないのだ。婚姻生活の長い夫が「俺が食わせてやっているんだから、別れに発展するようなケンカは仕掛けてこないだろう」とか、付き合いの短いカップルでも「いや〜、俺にベタ惚れの彼女が別れたりするような……(以下略)」という勘違いはなきにしもあらずだが、いずれにしても少々考えづらい。
では、Cの「予見しない」はどうだろう。こちらは私自身には比較的しっくりくる。そこから、
- 仮説7:将来のリスクを予見し行動することにおいて、女性の方が優れている
という仮説が立てられるが、これはビジネスにおいては頼もしい特徴になるのではないか?
あわせてもう1つの疑問である、2.の「忘れてもらう方法」について考えてみよう。雪にたとえるなら、「根雪が溶けることはないのか」になる。
仮説6の「これ以上勝負する必要がない場合は『忘れる』」が正しいとすると、女性が「将来の勝負に備える必要がないという状態になれば忘れる」はずなのだが、果たしてそれは可能なのだろうか?
このあたりはぜひ一度、妻に聞いてみたい。でも、聞いたとしたら、
私:ね、なぜ昔のことを覚えているの?
妻:忘れることができないから。
私:それって、将来のケンカに備えているんじゃない?
妻:あなた、何か私に言えないことしたの?
私:いや、そうじゃなくて……。
妻:あなた、以前にもそんなこと言ったわよね。そんなときには、●●してたじゃない。
私:なんで、そんな昔のことまで蒸し返すんだよ。だいたい、よくそんなこと覚えていられるよな。
……やめとこう。絶対「寝た子を起こす」ことになりそうだ。ちなみに後日談だが、編集K女史からバッサリやられたことを追記しておこう。
「女性のほうが将来のリスクに備える、なんて“あたり前田のクラッカー”ですよ。溜田さん、今さら何言っちゃってるんですか。いいですか? 女性は自分が子どもを守るという意識が強いし、そのためにはペアになるオスがどういう存在かっていうのは、すごい重要なファクターなわけですよ。だから、オスがちゃんとしてるかどうかは常にリスクファクターとして見定めてるんです。だから溜めるし忘れない。分かりましたかっ!」
は、はい。でも、Kさん。あなた今、シングルだよね。(あ、またやっちゃった!)
溜田信(ためだ・まこと)
東京大学工学部応用物理学科卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。銀行オンラインシステム担当のシステムズエンジニア&営業マネージャを経験。その後、外資系SIベンダー、マイクロソフトにおけるソリューションビジネスの経験を経て、戦略系コンサルティングファームA.T.カーニーに入社。メーカーの事業戦略・SIベンダーの営業戦略・組織改革、金融機関のIT戦略等、IT知識を持つ戦略コンサルティングプロジェクトに従事した経験を持つ。グロービスにおいては、マーケティングならびに思考系の講師を担当している。
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