社長が分かっていそうで分かっていない、IT経営のカンどころ:新連載・松岡功の時事日想(1/3 ページ)
「ビジネスやマネジメントにITをどう生かせばいいのか」といったことで悩んでいる人も多いのでは。今週からスタートした松岡功の時事日想では、「IT経営」に関わるさまざまな話題を取り上げていく。
著者プロフィール:松岡功(まつおか・いさお)
ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。
主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。現在、ITmedia エンタープライズで「Weekly Memo」を連載中。
本コラムのテーマは、一言でいうと「IT経営」。つまり、経営にITをどう生かすか、である。この問題意識をお持ちの読者諸氏に、少しでもお役に立つような情報をお届けしていきたいと思う。
連載初回は、筆者が最近取材した中で印象に残った調査結果と、ある中堅企業のIT活用事例を取り上げながら、IT経営の“勘所”について考えてみたい。
まず、印象に残った調査結果とは、アクセンチュアが発表した「グローバルCEO調査 2014:CEOが直面する課題〜デジタル時代を迎えて(参照リンク)」と題したリポートだ。グローバルの企業経営幹部(CEOをはじめとする、いわゆるCxOの役職者)を対象に実施した経営意識調査で、グローバルの企業経営幹部が今、抱えている課題や懸念を明らかにすることを目的としている。
調査対象となったのは、日本を含む世界20カ国の企業経営幹部1041人(うち33%がCEO)。日本の回答者は全体の7.3%に当たる76人(うち42%がCEO)である。2013年11月に調査を実施した。
この調査結果では、グローバルとの比較によって明らかになった日本企業の課題として、「グローバリゼーション」「組織・人材への投資」「デジタライゼーション」の3つを挙げている。中でも筆者が最も興味深かったのは、デジタライゼーション、すなわちIT化に関する内容である。
それによると、日本企業はデジタライゼーションについて、関連する技術の重要性を非常に強く認識しており、ビジネスの成長に寄与することも十分に理解していることが分かった。その背景には、これまでさまざまな技術で社会を変革させてきた日本企業の成功体験があると見られる。
しかし、この調査でグローバルの回答との違いが明確に表れたのは、「デジタルイノベーションの責任者は誰か?」という点だ。グローバルの回答ではCEOが35%でトップだったのに対し、日本企業はCIO(最高情報責任者)が39%でトップとなり、CEOは14%にとどまった。
つまり、日本企業ではCEOがその責任をCIOに委ねているケースが多いのである。だが、CEOが自ら指揮を執らずして、果たして企業はデジタルイノベーションを推進できるのだろうか。この調査結果でデジタライゼーションが課題として挙がった理由はここにある。
すなわち、経営者こそがIT化の陣頭指揮を執るべし。これが、この調査結果に見るIT経営の勘所である。
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