社長が分かっていそうで分かっていない、IT経営のカンどころ:新連載・松岡功の時事日想(2/3 ページ)
「ビジネスやマネジメントにITをどう生かせばいいのか」といったことで悩んでいる人も多いのでは。今週からスタートした松岡功の時事日想では、「IT経営」に関わるさまざまな話題を取り上げていく。
中堅企業のIT経営事例
アクセンチュアの調査結果では、日本企業はグローバルの中でも、IT経営の推進に向けて自らリードしようとする経営者が少ないという実態が明らかになった。
だが、そんな日本企業でも、経営者自らがITを駆使して着実に業績を伸ばしている事例がある。この事例、ITの活用方法もさることながら、経営者の考え方が非常に印象深かったので、そこにフォーカスを当てながら紹介したい。
取材したのは、全国に80店舗を超える宝飾品専門小売店チェーンを展開するベリテ(本社:神奈川県横浜市)という会社である。従業員数400人ほどの中堅企業で、経営サイドと現場(店舗)の間の迅速かつ的確なやりとりが経営の生命線といえる業態だ。その意味では、この事例は業種に関わらず、多くの企業にとって参考にしていただけるのではないかと思う。
さて、同社はどのようにIT経営を進めてきたのか。多くの企業と同様、同社も基幹業務の処理については、かなり前からコンピュータを使用してきた。しかし、同社の社長兼CEOである平野和良氏によると、基幹業務システムだけでは情報が限られるうえ、一定の処理時間がかかることから、経営サイドが適切な経営判断を行うために必要な情報を素早く的確に抽出できないという課題を抱えていた。また、現場からそうした情報を毎週Excelシートでリポートする形をとっていたが、書式がバラバラだったり数字の整合性がなかったりして、それらを見やすくまとめるのに手間取っていたという。
そこで、平野氏は自らがかねて抱いてきた「生きた数字を経営に生かす」という強い思いのもと、経営情報を可視化できるBI(ビジネスインテリジェンス)ツール(※)を1年前に導入した。「生きた数字」とは、例えば今月末の業績がどのくらいで着地するのかといった「予測」につながる数字のことである。同氏は、その予測の裏付けとなる仮説にひもづくデータを独自のKPI(指標)として定義し、現場のマネージャーと共有することによって、生きた数字を分析できるようにしたのである。
つまり、経営者がKPIを通じて注力すべき方向性を明示し、現場がその具体的な取り組み方法を考えて「予測数値」を立て、その進捗(しんちょく)を適時チェックすることにより、仮に予測と実績にズレが生じることがあれば、すぐに次の一手を打つことができるようにしたのである。現場にとってもこれまでのようなリポートを作成する必要がなくなり、BIツールを通じてフィードバックを素早く行えるようになったので、業務の効率化につながっているという。
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