全く興味がなかったのに、なぜ「花の魔力」に取りつかれたのか:仕事をしたら“珍しい花”を見つけた(後編)(3/4 ページ)
世界中の珍しい花を採りつづける――職業「プラントハンター」。あまり聞き慣れない仕事をしている西畠清順氏は学生時代、花には全く興味がなかったという。しかし、ある山を登って、そこで目にしたものは……。
花の業界にもスターが必要
土肥: 別のインタビューで、清順さんはこう言っていました。「花の業界にもスターが必要だ」と。これはどういう意味でしょうか?
清順: 野球の世界にはイチロー、田中将大、サッカーには本田圭佑、香川真司、フィギュアスケートには羽生結弦、浅田真央といったスターがいますよね。スターが生まれ、活躍することで、子供たちは「自分も大人になったら、彼らのようになりたい」と思う。そして、その世界が活性化しますよね。そうした流れはスポーツだけでなく、アート、建築、ビジネスでも同じ。ビジネスの世界だったら、「カリスマ」と呼ばれている経営者が出てくると、「自分も将来は起業しよう」という人が増えてきますよね。そうすると、才能のある人たちがたくさん集まってきて、さらに活性化されていく。
では、花の世界はどうか。「スターって何やねん。誰がおるねん」といった感じ。花の世界にもスターが生まれ、その人が活躍するとどんどん発展していくのでは、と思っています。なぜこんなことを考えているかというと、花の世界は地位が低いから。
土肥: 地位が低い? どういうことでしょうか?
清順: 給料が安い。「今年はボーナスないねん」といった会話が、当たり前のように飛び交っているわけですよ。例えば、オシャレな花屋を数多く出店されているA社に憧れて、たくさんの学生が入社を希望する。そして、彼ら・彼女らは高い志をもってその会社に就職するわけですが、「いきなり給料が支払えない、2〜3カ月待ってほしい……」と言われたりする。また、この業界はいわゆる「3K」……きつい・汚い・危険なので、たくさんの人がついていけなくなって去っていく。
でも、この業界に入ってくる人たちは「花が好き」。そんな気持ちだけで成り立っている、とも言えるんですよ。
土肥: それは花の業界だけではないですよね。例えば、幼稚園や保育園の先生になりたい人は「子供が好き」。そんな人たちの気持ちをうまく利用して……給料を安くしているところがありますよね。
清順: とにかく、花の業界は低賃金で働く人が多い。オレは「それが当たり前」になっていることが、嫌いなんですよ。花の会社でも日本を代表する企業と同じくらいの給料がもらえる――。そんな会社が出てくるためには、やはりスターが必要。そのスターに憧れて、優秀な人材がどんどん入ってくる。「年収2000万円を手にするためにはどうすればいいか? 花の会社で働けば、そのカネを手にすることができる」ということになれば、優秀な人材がどんどん増えていくのではないでしょうか。
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